第537話

『『……………!?』』


 この辺りを治める領主の使いとしてやって来た数人の男女。その先頭に立つ女性を見てジョット達に電流が走った。


 数人の男女の戦闘に立つ女性はジョット達と同じくらいの年齢だと思われるが、背丈はマリー達よりも低くてそこを含めると歳下のようにも見える。しかし彼女の胸元には、ここにはいないシレイアに勝るとも劣らない人並み以上の乳房が存在を主張しており、その上彼女の甲冑の胸当てだけは形も大きさも乳房に合わせた特別製で、それが彼女の豊満すぎる乳房の主張の手助けをしていた。


(な、なにアレ……!? シレイアと同じくらいのウシチチって、そんなのアリ?)


(しかも背が短いこともあって胸が強調されているだけでなく、あの甲冑の胸当ても要注意ね……!)


(言葉にすればロリ巨乳の女騎士と言ったところか? そんなものが存在するとは流石は別銀河の未開発惑星か。これは不味いな)


(こんな……こんな、今まで見たこともないタイプの巨乳美女が現れたら……!)


「………」


 マリー、マーシャ、セレディス、カーリーの四人は戦慄の表情で目の前の女性を見た後、自分達の夫もしくは婚約者であるジョットの方を見る。するとやはりジョットは目の前の女性に視線が釘付けとなっており、当人である女性や他の人間は完全な無表情の彼の視線の先がどこにあるか分からないようだが、マリー達四人だけはジョットの視線が女性の胸元に向けられているのが分かった。


 どうやらジョット達の前にいる女性は、この辺りではそれなりに有名のようで食堂の客達はどこか尊敬するような視線を向けているのだが、それでもやはり男の客の多くはジョットと同じように下心のある視線を彼女の胸に向けていた。その気持ちは分からなくもないのだが、それでもマリー達は面白くなかった。


 このアザイアに来たのは9543番と10189番の頼みを聞いたのもあるが、ジョットとマリー達の新婚旅行でもあった。それなのにそこで新しい女性がジョットに近づいてくるのはできるだけ避けたいと考えたマリーが行動に出る。


「え、え〜と? 貴女は一体どちら様なのでしょうか?」


 マリーは少しとぼけた風に女性に話しかけ、それと同時にテーブルの下でジョットの足を軽く蹴る。それによってジョットの視線が女性から逸れると同時に、女性が名乗り出す。


「私はローラ・フォン・ネロチェイン。この土地の領主、ネロチェイン男爵の娘であり、私設軍の隊長の一人でもある」


(領主の娘で私設軍の隊長の一人……。物語に登場する姫騎士みたいなポジションって訳ね)


(私も貴族の令嬢で私設軍を率いた身で、しかも爵位は我が家の方が上だ。……勝ったな)


 目の前の女性、ローラの自己紹介を聞いてマーシャとセレディスが謎の対抗心を燃やしている横でカーリーがローラに話しかける。


「それでローラ様……いえ、領主様は私達にどの様なご用件ですか? 私達に来るようにという事は何か依頼でもあるのですか?」


「……すまないが私はそれに答えられない。詳しく話は領主様に聞いてもらいたい」


(ああ、これは『当たり』かもね)


 ローラの言葉を聞いたカーリーは心の中で呟いた。


 もし単なる魔物退治に協力するような内容ならばこの場ですればいいはずなのに、この場ではなく領主の所で話をするとなると、内容は魔物退治ではなく魔族関連である可能性が高い。それはつまりジョット達の目的である星を破壊する兵器に近づける可能性があるということなのだが……。


(でも、なんか嫌だな……)


 と、カーリーは気がつけばまたローラの胸元に視線を奪われているジョットを見て思うのであった。

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