第536話
それからジョット達は今日泊まる宿を決めると、宿の一階にある食堂で夕食をとることにした。
「材料は全く見たこともない肉や食材だし、あまり馴染みのない味だけど、特に問題無く食べられるんだよな」
「ええ、どういう訳か人類タイプの生物は食べれる食べ物の種類や味覚が同じらしいからね。そのお陰じゃない」
夕食を食べながらジョットが疑問を口にするとマーシャがそれに答えてセレディスが頷く。
「宇宙には様々な生物が存在しているが、人類タイプの生物は大体と言うかほとんど似たような外見と身体構造をしている。まさか別銀河の人類タイプも私達と同じとは思わなかったがな。これは今まで多くの科学者が研究しているが理由が分からずにいる。……もしかしたら9543番と10189番だったら理由が分かるかもしれないな」
セレディスの言葉にマリーが首を横に振る。
「止めといた方がいいんじゃない? 確かに9543番と10189番だったら知っているかもしれないけど、とっても長くて理解が面倒な説明か簡単だけど今までの常識がひっくり返る説明のどちらかになると思うよ? それだったら聞かない方がいいって」
「そうだね。それよりも今は食事を楽しもうよ。これだって私達の仕事の一つなんだしさ」
マリーの言葉に同意したカーリーが周囲を目だけで見て言う。ジョット達が囲んでいるテーブルの上には多くの料理が並んでおり、その景気の良さに食堂にいる客の視線は彼らの元に集まっていた。
「それはそうだけど……。本当にこうして食事をとっているだけで人類側の権力者がやって来るのか?」
夕食を食べながらジョットがカーリーに質問をする。
こうして食事をとったり休憩をとるだけだったら、わざわざアザイアの宿屋を利用しなくても魅火鎚に回収してもらえばすむだけの話である。しかしそれをせずにこうしてアザイアの宿屋に泊まったり夕食を食べているのはカーリーの発案であった。
昼間はアンスタンを使う傭兵のフリをして仕事をしながら兵器の情報を集め、夜は傭兵の仕事で稼いだ金で景気のいいよう振る舞って自分達の評判を周りに宣伝する。そうすることで人類側の権力者と知り合う機会を作り、そこから兵器の情報を探す人脈を作ろうというのがカーリーの考えである。
「大丈夫だって。今までの街でも人類と魔族の戦いが激しくなってきているのはジョット君達も知っているでしょう? そんな時に実力のある傭兵がいたら、領主とか偉い人は雇いたくなるって」
「言いたいことは分かるけど……そんなに上手くいくのかな?」
「んー? どうやら今のところは上手くいっているみたいだよ。……ほら」
自信があるように言うカーリーにジョットが相変わらずの無表情で首を傾げていると、マリーが食堂の入り口を見ながら言う。ジョット達も食堂の入り口を見ると、何やら外では大勢の人が集まっているようで、やがて食堂の中に数人の男女が入って来た。
食堂に入って来た数人の男女は軽装だが揃いの甲冑を身につけており、甲冑の下にも揃いの軍服らしき衣装を着ていて、今まで見てきた村人や旅人とは明らかに身分が違うことが分かった。そしてその数人の男女は食堂の中を見回してジョット達を見つけると、まっすぐにジョット達の前まで来て代表と思われる女性が口を開いた。
「お前達か? 最近噂になっているアンスタンを使う傭兵達というのは? 私達の主人である領主様がお呼びだ。大人しくついてきてもらいたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます