第535話
アザイアの衛星軌道上で、宇宙服を着ずに宇宙空間に漂っている二人の女性がいた。
二人の女性の一人、自分の本体である惑星のアザイアを見つめている10189番にもう一人の女性、9543番が話しかける。
「どう? 例の物は見つかった?」
9543番が言っているのはアザイアの人類が開発した星を破壊する力を持った兵器のことで、彼女に聞かれた10189番は静かに首を横に振った。
「いいえ……。兵器の力は感じられません」
10189番は以前感じた兵器が放つエネルギーを探ることで兵器のある場所を探ろうとしていたのだが、その兵器のエネルギーは全く感じられなかった。
「そう言えば以前兵器の力を感じたのはどの辺りだっけ?」
「確か……あの辺りです」
9543番に聞かれて10189番はアザイアにある大陸を指差す。
アザイアは表面の七割が海で、残り三割の大陸は海の中央にある大きな大陸の周囲に無数の島があるという形をしていた。10189番が指差したのは大陸のほぼ中央の位置で、それを見た9543番が顔をしかめる。
「あそこって確か……ジョット君と同じタイプの人類と、魔族って呼ばれている人類の勢力圏の境界線辺りだっけ? ついでに言えば二つの人類の戦いが激しい場所の一つ」
「そうなんです」
9543番の言葉に10189番が頷く。
「これは探してくれているジョット君も大変だろうね。お礼は一応用意しているけど、ワタシからも何かお礼を付け加えた方がいいのかもね?」
9543番はアザイアで兵器の探索をしてくれているジョット達のことを考えて呟く。ただでさえ問題の兵器を作ったのが人類なのか魔族なのかも分かっていないのに、あるかもしれないと言う場所が人類と魔族の境界線であり、二つの種族の戦いの最前線となれば捜索は難しいと言えるだろう。
しかし9543番と10189番は人類に混じって何かを探すのは不向きだし、ゲムマを使って強引に探したら肝心の兵器を使われて星が破壊されるかもしれない。結局のところ、二人にはジョット達に頼るという選択肢しかないのであった。
そして当のジョット達はと言うと……。
「………」
「おい、見ろよ。何だアイツらは?」「何でも旅の傭兵らしいぜ?」「男は一人だけで、残りの四人は女かよ? しかも全員いい女じゃねぇか?」「ハーレム気取りか、あの野郎?」「チッ! 見せつけてんじゃねぇぞ、あのガキ」「あの中の何人か、もしくは全員に手を出しているんじゃねぇだろうな? ……ヤベェ、あの男、殺したくなってきた」「女がいねぇ俺への当てつけか? あの男、殺してぇ……!」「俺も殺したい」「俺も殺したいぜ」「俺も殺す」「殺す」「殺す」「殺す」
と、旅先で寄った街で大勢の男からほとんど殺気と言ってもいい嫉妬の感情を浴びせられていた。
正確に言うと街の男達から嫉妬の感情を向けられているのはジョットただ一人で、その理由はマリー、マーシャ、セレディス、カーリーと言った滅多に見られない美女を四人も引き連れていることだった。
男から嫉妬の視線を向けられるのは真道学園では日常茶飯事であったが、それでも周囲から殺意混じりの感情を向けられるのは中々慣れるものではなく、他の銀河の見知らぬ惑星に来てまで嫉妬の目で見られているジョットはうんざりしたように息を吐く。
「はぁ……。毎回毎回、一体どうしてこうなるんだろうな、俺は? いつもゲムマよりも人間の方が俺に敵意を向けてくるし……もしかして俺の本当の敵って人類なんじゃないだろうな?」
「ジョット君? 何、昔の漫画やゲームに登場する悪堕ちしたキャラクターみたいなことを言ってるの?」
ジョットが疲れた風に言うと、それを聞いたカーリーが苦笑を浮かべながら言葉を返すのであった。
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