第531話
「言いたいことは分かったけど、それって俺達だけで何とかなるのか?」
ジョットは9543番と10189番に、自分達だけで星を破壊する兵器を奪い取れるのかと聞く。
今の話を聞いてジョットは、見ず知らずの星と言えどそれが破壊されて星に生きる生物が死滅するのは目覚めが悪く、できることならばなんとかしたいと思った。しかしこの9543番と10189番の頼みを聞けば別の銀河にある全く未知の惑星で戦いになる可能性もあり、そうなればジョットだけでなく彼女の周りにいる女性達も危険が及ぶかもしれないとも思ったのだ。
「ああ、それなら大丈夫。10189番の星に住んでいる人類の兵器って、この銀河のパワードスーツ? って言う兵器と同じくらい性能でしかないから。ワタシも一応偵察をしてみたけど、一番高性能な奴でもミレス・マキナにも勝てないと思うよ?」
「その程度なの? それだったら私達に頼む必要がないんじゃないの?」
10189番の本体の星に住む人類の兵器は、彼女が昔に作り送った偵察用のゲムマを捕らえて解析し、そのデータから作り出されたものである。だがその兵器の性能はパワードスーツ程度の性能ぐらいしかないらしい。
この事実のマリーが若干がっかりして言うと、9543番は困ったように肩をすくめる。
「その程度の性能の兵器しかないから、向こうの人類はちょっと強いゲムマを送ればためらいなく問題の兵器を使っちゃうの。使ったら最後、自分達ごと星が破壊されるって知らずにね」
「でもワタシ達にはゲムマ以外に使える手段がありません。今のこの分身体でしたら人類の中に忍び込むことはできると思いますけど、この分身体の性能は人類の肉体と同じくらいの性能で、もし戦いになれば戦闘力が足りなさすぎます」
困った表情で言う9543番に、同じく困った表情をした10189番が続く。
ゲムマを使えば10189番の本体に住む人類は、そのあまりの戦力差に星を破壊する兵器を使って対抗しようとする。だったら外見は人類と同じ分身体を送り込んで星を破壊する兵器を盗み出せばいいのかもしれないが、話はそう上手くはいかず分身体ではもし戦闘になった時には力不足であるようだった。
「だったら分身体にゲムマと同じだけの戦闘力を持たせればいいだけじゃないのか?」
「それができたら話は早いんだけどね。ワタシ達が作る分身体やゲムマの戦闘力は内蔵しているエネルギーの量に比例していて、ゲムマ並みの戦闘力を持たせたくてもそのためのエネルギーが分身体のエネルギーの容量を余裕で上回っちゃうんだ」
「それで貴女達は私達に頼るしかないってことね」
セレディスが分身体にゲムマの戦闘力を持たせることを提案すると9543番はそれが無理である理由を話し、それを聞いてマーシャが納得したように頷く。そして9543番は、自分達がジョット達に頼むしかない理由を本人達に理解してもらえたと判断すると、再びジョット達に頼もうとする。
「だからお願い。ジョット君達で星を破壊する兵器を盗み出してくれない? もちろんタダでとは言わないよ? ちゃんとお礼はするからさ」
「9543番さん達のお礼ですか?」
9543番の口から出た「お礼」という言葉にシャルロットが反応する。彼女だけでなくジョットを初めとする他の者達も、ゲムマが用意する謝礼に興味があるようであった。
「そう。10189番の本体である惑星でしか見つからない希少な金属。それが持つ力はきっとジョット君達も興味を持つはずだよ。それに彼女の本体で暮らす人類が使う兵器……あれにはちょっと変わった機能があるみたいなんだ」
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