第530話

「え? 本当に星を破壊する自爆装置を作っちゃったの? 10189番の所の人類は?」


「へぇ? それは中々見所がありそうな人達だね?」


 まさか自分の言った冗談が事実だったことにカーリーが驚き、自爆装置と聞いたマリーが感心したような表情を浮かべる。そんなマリーを無視して9543番が詳しい説明をする。


「正確には星を破壊する自爆装置ではないんだけどね。……どうやら10189番の本体で暮らしている人類って今、二つに分かれてワタシ達がしているような遊び戦いとは違う、正真正銘の殺し合いをしているみたいなの。それでその片方の人類がもう片方の人類を滅ぼすために何やら強力な兵器を作っているみたいだけど……」


「その兵器の威力が作っている人類の計算以上に強すぎて使ったら最後、自分達どころか10189番の本体である惑星ごと破壊してしまう。しかも兵器を作っている人類はそれに気づいていないってことね?」


 9543番の説明を聞いてマリーが自分の予想を口にすると9543番は無言で頷き、マリーもまた心から共感できるといった風に何度も頷く。


「うんうん……。 威力や性能の向上のために改良を重ねた結果、兵器が製作者の予想を超えた威力や性能を得るなんてよくあること。しかもそれで一つの星を破壊できる威力を実現できるだなんて、やっぱりその人類は中々見所があるわね」


「お前は何を言っているんだ? ……それで10189番だっけ? 確かに自分の本体が破壊されるかもしれなくて困っているのは分かったけど、自分でなんとかできないのか? ほら、ゲムマを送ってその人類から問題の兵器を奪うとかやりようがあるだろ?」


 ジョットはよく分からない感心をしているマリーに呆れたような声で言った後、10189番に話しかける。彼の言う通り、自分の本体である惑星を破壊する兵器の存在はゲムマにとっては見逃せないが、ゲムマを使えば宇宙に進出する技術力もない人類なんて相手にならないはずであった。


 しかし10189番はジョットの言葉に首を横に振った。


「それが……ワタシのゲムマでは人類に勝てなかったんです」


「どうやら10189番の本体に住む人類は、調査用に送った彼女のゲムマを捕まえて解析した後、その情報から新しい兵器を作ったみたいなの。それで星を破壊する兵器を奪おうと、これまでに何度もゲムマを送ったんだけど人類に撃退されたんだって」


 10189番の言葉を引き継いだ9543番が、10189番の本体に住む人類がゲムマを撃退できた理由を説明する。


「もちろん10189番が今まで送ったのは自分の本体を傷つけないために性能を抑えたゲムマだったんだけど、今となってはあまりに強力なゲムマを送り出したら、星を破壊する兵器を使われるかもしれなくて手を出せなくなったってこと」


「なるほどな。それで同じ人類である私達に、その問題の兵器を盗み出してほしいということか」


 事情を聞いてセレディスが納得したように言う。


 確かに同じ人類であるジョット達ならば、10189番の本体に住む人類の元に紛れ込んで星を破壊する兵器を盗み出せるかもしれないし、いざとなればアレス・マキナとミレス・マキナを使った強硬手段を取ることだって可能だろう。そしてこれはゲムマの事情をよく知るジョット達にしか頼めないことだった。


「それでどうかな? ジョット君、頼まれてくれないかな?」


「お願いします。どうか力を貸してください」


 9543番と10189番はジョット達に、異なる銀河の人類から星を破壊できる威力を持った兵器の奪取を頼むのであった。

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