第526話

「……父さんと母さんが何であんな部屋にしたのか分かった気がする」


 ジョットとマリー、マーシャ、セレディス、シレイア、カーリー、シャルロットの結婚式と婚約発表会が無事終わった日の夜。ジーナは屋敷にある自分の部屋の中で、ベッドの上に横になりながら天井を見上げて呟く。


 ジーナがいる彼女の自室は高級ホテルのスイートルームに負けないくらいの快適さな上、ジーナの趣味に合わせた家具を揃えており、しかも彼女専用のミレス・マキナを格納されている格納庫に通じる直通通路までもあった。まさに至れり尽くせりな環境なのだが、ここまでくると逆に落ち着かなくなり、ジーナはコロニー郡で暮らしていた頃の家を部屋の中に作った両親の気持ちが分かった気がした。


「それにしても随分と変わっちゃったな。色々と……」


 辺境のコロニー群で育ったジーナは、自分はそこでずっと生きていくんだと思っていた。父親や兄と一緒にワクス・マキナとミレス・マキナを使ってジャンク漁りをして生計を立てて、適当な年齢になったら同じコロニー郡で生きている誰かと結婚でもするのかと、ぼんやりと考えていたのだが、今では辺境のコロニー郡とは遠い場所にいた。


 兄のジョットがアルバイト先で新種のゲムマを単独で退治した功績で貴族となったと思ったら、美人で巨乳なアンドロイドの侍女と大清光帝国の武力の象徴であるアレス・マキナを与えられて、それからすぐに結婚相手ができて真道学園に入学。その真道学園でも、とある事件で知り合ったリューホウ王国の貴族令嬢二人、大清光帝国の皇女とも婚約。


 それからも様々な出来事が起こったが、今までジーナはどれも話が大きすぎたために実感を得られずにいた。しかし今日こうして兄の結婚式と婚約発表会に参加することで、流石にジーナも自分が辺境のコロニー郡とは遠すぎる場所に来たのだと実感したのであった。


「お兄ちゃん、これから大丈夫なのかな……」


 ジーナは今頃は同じ屋敷にある別の部屋で美しい女性達と初夜を迎えているであろう兄のことを考える。


 ジョットと結婚もしくは婚約した女性達は確かに美人だが、それ以上に一癖も二癖もある女性達だ。そんな人達と一緒になって本当に大丈夫なのかとジーナは兄を心配するのだが……。



「……………昨日は、お楽しみだったようだね?」


「………」


 次の日。ジーナは屋敷の応接間にいるジョット達の姿を見て思わずそう言い、妹の言葉に返す言葉もないジョットは無言で妹から目を逸らすことしかできなかった。


 昨日まで兄の心配をしていたジーナは、心配なんてするんじゃなかったと言いたげな表情を浮かべており、そんな彼女の視線の先には……。


「ふふん♩ どうしたの三人共? 一晩寝たのにまだ回復していないの? 案外と体力がないんだね?」


『『……』』


「た、体力がないって……仕方が、ないでしょう? あんなの、初めてなんだから……!」


「いや、あれは私達の経験が無いのもあるが、それ以上にジョットが凄いのだと……思うぞ?」


「うう……。ペルルの裏切り者ぉ……。わ、私、初めてだったのに……! ジョット様の前で、あんな恥ずかしい格好にして……」


 何故か異常な程に元気なマリーが腰に手を当てて言ってそれにムムとペルルが無言で頷き、それに対して憔悴しきった様子のマーシャとセレディスとシレイアが恨めしげな視線をジョットとマリーに向けていた。ちなみに元気なマリーだけでなく、疲れ切っているマーシャとセレディスとシレイアも肌にツヤがあり、それを見たジーナは昨日何があったのを察して、兄達がとりあえずこれから先も問題なさそうだと思うのであった。

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