第525話

 ジョット達の結婚式は、新郎新婦が純白の専用の衣装を身に纏って夫婦の未来を古くから信じられている精霊に祝福してもらえるように祈る、という大清光帝国で古くから行われている流儀で行った。


 マーシャとセレディスは祖国であるリューホウ王国の流儀の結婚式を行うのを希望するかと思ったが彼女達も大清光帝国の流儀の結婚式を行って、マリー、マーシャ、セレディス、シレイアの四人との結婚式が終われば次はカーリーとシャルロットとの婚約発表会が続けて行われた。


 大清光帝国とリューホウ王国だけでなくそれ以外の国々からも招待された大勢の貴族や軍人達に見られながら結婚式と婚約発表会を行なっていたジョットは、根が小市民なためこれ以上なく緊張しており結婚式や婚約発表会で自分が何をしたのか全く記憶になかった。彼の記憶に残っていることと言えば……。


「花嫁衣装を着たマリー、マーシャ、セレディス、シレイアに、花嫁衣装じゃないけどドレスを着たカーリーとシャルロットが綺麗だったことしか覚えていない」


「お兄ちゃん……。よくそんな言葉がすぐに出てくるね?」


 結婚式と婚約発表会が終わった後、感想を聞いてきたジーナにジョットが、自分の嫁達の花嫁衣装と婚約者達のドレス姿に見惚れていたことを言うと、ジーナは思わず脱力した。そしてその後ろではマリーを初めとするジョットの嫁四人と婚約者二人が頬を赤く染めていた。


「いやいや、ジーナ嬢よ。真道学園のハーレム王……と言うより、複数の女性と結ばれた男ならそれぐらいの愛の言葉、普通に出てこないとこれから大変だぞ?」


 脱力したジーナの言葉にそう返したのは、真道学園でジョットが所属しているクラスの教官を務めている三田・ロウであった。


 ロウもまた過去の真道学園のハーレム王であり、今も複数の女性達と付き合っているという噂が尽きない人物で、そのせいかこの様な場では言葉に強い説得力が感じられた。


「三田教官。今日は来てくれてありがとうございます」


「ミロちゃんで良いと言っているだろう? それに教え子の結婚式と婚約発表会と言われれば参加するに決まっているさ。……だが」


 礼を言うジョットに言葉を返したロウは、彼と結婚または婚約をした六人の女性達を見て感心したように頷く。


「俺もこれまでに様々な女性と彼女と付き合った男を数多く見てきたが……兵器メーカーの社長令嬢、隣国の王族とも血縁関係がある貴族令嬢、自国の皇女、アレス・マキナの機士と、これだけ個性的な女性達を娶った男は見たことがない。真道学園七十七代目ハーレム王、祭夏・ジョット、お前はある意味歴史に名を残す男になるかもしれないな?」


「いや、そんなことで歴史に名を残しても……」


 ロウに歴史に名を残すかもしれないと言われたジョットがどう答えたらいいか分からずに言うと、ロウはジョットに顔を近づけて彼にしか聞こえない音量の声で話しかける。


「まあ、そんなことはどうでもいい。本題はここからだ。……ジョットよ、今晩の初夜のことなんだが、できることなら全員同時にやった方がいいと思うぞ。女性というのはこう言った順番とか順列には敏感だからな。あと、マリー嬢とはすでに関係を持っているのは理解しているが、それでも平等に愛するのが複数の女性達と長く続くコツだぞ? まあ、その辺りはすでに実践しているし言う必要はないと思うがな」


「何を言っているんですか、三田教官?」


 これからの初夜について真剣な表情で小声のアドバイスを送ってくるロウに、ジョットは先程とは別の意味でどう答えたらいいか分からず、そう答えることしかできなかった。

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