第524話

 ジャッキーを初めとするジョットを敵視している数十人の真道学園の男子生徒達が屋敷のセキュリティシステムに撃退されたせいか、それからの結婚式と婚約発表式の招待客の受け入れは特に問題無く進んだ。そしてその招待客の中には真道学園の生徒会長である龍像寺・アレックスの姿もあった。


「やあ、ジョット君。それに皆も中々に個性的でいい屋敷だね」


 マリーと黒翼・ヘビー・マシーナリーが建てた悪の組織の要塞そのものと言っても過言ではないジョットの屋敷とそのセキュリティシステムを見ても、動じることなく心から「個性的ないい屋敷」と言い放つアレックス。そんな彼の後ろには、すでにアレックスと結婚している女性が三名、婚約している女性が三名、今はまだ恋人だが近いうちに結婚もしくは婚約をする予定の女性八名、合計で十四人の女性達が控えていた。


 ……ちなみに主に胸部に女性の魅力を感じるジョットとは対照的に、アレックスは主に臀部に女性の魅力を感じているのか、アレックスの後ろにいる十四人の女性達は胸部は慎ましかったが、下半身のある部分は人並み以上のボリュームがあったりした。


「あっ、ハイ。アレックス先輩も来てくれてありがとうございます」


「気にしなくてもいいさ。俺はジョット君の先輩だけど同時に龍像寺家の次期当主だからね。招待状を受け取ったら行くしかないからな。……それにしても」


 アレックスは礼を言うジョットにそう返事をすると、ジョットの側にいるマリー、マーシャ、セレディス、シレイア、カーリー、シャルロットの顔を順番に見る。


「四人との結婚式と二人との婚約発表式を同時にやるとは中々やるじゃないか? 俺だって結婚や婚約は一人ずつだったのに。流石は七十七代目の真道学園ハーレム王先代である俺を完全に超えたな」


「そ、そうですか……?」


 ジョット達の顔を見てからアレックスは何度も感心したように頷く。


 真道学園には問題のある生徒を炙り出すという目的から、複数の女性と関係を持った生徒を容認してハーレム王と呼ぶ非公式の制度がある。アレックスはその七十六代目ハーレム王を名乗っていて、ジョットも知らない間に七十七代目ハーレムに任命されているのだが、未だに実感のないジョットはアレックスの言葉に曖昧に答えることしかできなかった。


「そうだとも。……しかしこの惑星の様子を見て思ったが、皆と結婚や婚約をするならこれからもっと貴族について学んだ方がいいんじゃないか?」


「え? どういうことですか?」


「いや、この惑星は将来、大清光帝国とリューホウ王国の交易の中継地となる予定なんだろ? 実際にここに来る前に惑星の施設を見てみたが、すでにどれも交易の中継地としては十分な効果が見込めるし、それは俺以外の招待客の貴族達もそう思うだろう。だからきっとこの結婚式と婚約発表式が終わったら、多くの貴族が交易関係の契約を持ち掛けてくると思ったんだ」


「あ……」


 アレックスは自分の言葉の意味を尋ねるジョットに自分の考えを説明すると、ジョットはこれから自分の周りの環境が大きく変わることにようやく気づく。


「最初は大清光帝国の上層部だけでなくマーシャやセレディス、シレイアの実家もサポートしてくれるだろうけど、ここはジョット君の領地なんだ。今のうちに領地経営だけでなく二カ国の交易に関する知識を仕入れた方がいいぞ」


「そ、そうですね……」


 後輩にこれからのことについて忠告したアレックスは、ジョットが相変わらずの無表情だが内心で気遅れしていることに気づくと、安心させるように笑いかける。


「まあ、そういうこと難しいことは周りが勝手にフォローしてくれるだろうさ。今は彼女達と幸せになることだけを考えればいい」


「………はい」


 アレックスの言葉にジョットはマリー、マーシャ、セレディス、シレイア、カーリー、シャルロットの顔を見てから頷くのであった。

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