第523話
ジョット達の屋敷は住民のほとんどが機士やミレス・マキナの技術者であるため、内部にはミレス・マキナや宇宙船を格納する倉庫の他に、負傷した兵士を治療する医療室も用意されている。その医療室は百人近い負傷者が入れるくらい広く、複数の高性能医療ロボットを初めとする首都星の大病院にも負けない設備が揃っていた。
そしてその屋敷の医療室では今、数十人の男達がベッドの上で横になってうなされているのであった。
医療室のベッドで横になっている数十人の男達は、ジャッキーを初めとする真道学園の男子生徒達だった。ジョットとマリーの関係を勝手に妄想した挙げ句に嫉妬に狂った彼らは、ジョットに天誅を下すべく屋敷に侵入したのだが、屋敷のセキリュティシステムとガードロボットによって全員返り討ちにされたのである。
そして心と身体をこれ以上無く傷つけられたジャッキー達は全員気絶しているのだが、夢の中では今だに屋敷のセキュリティシステムとガードロボットに襲われているようであった。
「な、なんだあの足場……? 穴が開いたり、閉じたり……いや待て! 穴は閉じたはずなのにどうして落ちていくんだ……!?」
「あれが、ガードロボット……? ひっ!? 何だあの逃げ場のない弾幕は……!」
「よ、よし! このタイミングなら、上手く飛び移れ……何でここでロボットが、あぁぁぁっ!?」
「ど、どこだ!? 動きが早すぎて見えない! ガ、ガードロボットはどこに……あっ?」
「か、壁が! 壁が迫ってくる! 逃げ道は……何であんな所にぃっ!?」
「待て! 待て待て待て! いくら何でもそれはやり過ぎだって! そんなの受けたら死んで……あーっ!?」
「ちょ、待て! このクソロボット! 弱い、攻撃で! 動きを封じながらチクチク攻めやがっ、て! せ、正々堂々勝負を……ぐわぁっ!」
「そんな所から攻撃するのは卑怯だろガードロボットぉ……!? このままじゃ嬲り殺しに……!」
苦悶の表情を浮かべてうなされているジャッキー達を見て、ジョットと結婚式に参加するためにやって来たサンダースとベックマンは何とも言えない気持ちとなっていた。
「まさか……侵入者がジャッキー先輩達だったなんて……」
「というか、マリーと黒翼・ヘビー・マシーナリーが建てた屋敷だって分かっていたら、こうなるのも予想できただろ? 何で侵入なんてしようとするんだよ?」
「あー……。先輩達、招待状を受け取った時から不機嫌そうだったからな。ストレスが溜まっていたんだろ。……というか? 先輩達にそんな理性的な判断ができるはずがないだろ?」
ジョットとサンダースの言葉にベックマンが中々に辛辣な言葉を返すが、三人共ジャッキー達を同情するような目で見ていた。しかしジョットの隣にいるマリーだけは満足げな表情で頷く。
「うんうん。
「セキュリティシステムの実動データがご祝儀って……?」
「それはまた、随分と身体を張ったご祝儀だな? オイ?」
「まあ、彼らが起きていたら色々と問題が起こりそうだから丁度良いかもな?」
マリーの言葉にジョットとサンダースとベックマンはそれぞれ呆れた口調で呟く。
結局、ジャッキーを初めとする男子生徒達が目を覚ましたのは、ジョット達の結婚式と婚約発表式が終わった数日後であった。
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