第517話

 ジョット達の屋敷のセキリュティシステムのテストが始まってから数十分後。二人のパワードスーツを着た男達が、慎重に罠を避けて警備ロボットと戦いながら屋敷の中を進んでいた。


「なぁ、コラックよぉ……。何で俺達はこんな所でこんなことをしているんだぁ?」


「うるせぇ、知るかよ! そんなことは俺が一番聞きたいんだよ!」


 二人の男の一人、ウーボが警備ロボットと戦いながら疲れた声で隣にいるもう一人の男、コラックに話しかけると、コラックもまた警備ロボットと戦いながら怒鳴り返す。


 コラックとウーボはギラーレ同盟の軍人ではなく、かつてはリューホウ王国のとある二つの貴族の家が共有していた特殊部隊の隊員であった。


 しかしコラックとウーボが所属していた特殊部隊が主に行なっていた任務は、宇宙海賊に化けて商船を襲った後に自分達が仕える貴族の家が来たら負けたふりをして撤退するというマッチポンプ自作自演。そしてそれをある偶然から知ったジョット達に妨害されて特殊部隊は壊滅し、コラックとウーボの二人は紆余曲折あってギラーレ同盟の軍人達と同様、黒翼・ヘビー・マシーナリーの新兵器のテスト要員となっていた。


 そんなコラックとウーボだったが、ある日いきなりギラーレ同盟の軍人達と一緒にこのジョット達の屋敷に連れて来られ、彼らも屋敷のセキリュティシステムのテストに参加することになったのだった。


「おいおい、コラックよぉ……。あちこちからギラーレ同盟の奴らの悲鳴が聞こえてくるぜぇ……!」


「ああ、俺にも聞こえているよ。……チックショウ! 確かに俺達は悪人かもしれないが、生きているうちからこんな地獄に堕ちるような罪を犯したのか?」


 周囲から絶え間無く響き渡るギラーレ同盟の軍人達の悲鳴を聞いてウーボがそう言うと、コラックが額から冷や汗を流しながら歯噛みをする。


 本人達の言う通り、コラックもウーボも特殊部隊の任務でいくつもの商船やら星を襲撃してきた悪党に分類される者達である。しかしそれでも、毎日のように黒翼・ヘビー・マシーナリーの元で過酷な新兵器のテスト要員として酷使された挙句、何の説明も無しにアクションゲームのステージに放り込まれるとなれば愚痴の一つや二つくらい言いたくなっても仕方がないかもしれない。


 そんなことを言い合いながらもコラックとウーボの二人は少しずつ屋敷の奥へと進んで行く。仮にも二人は特殊部隊の出身であるため実力はそれなりにあり、更には毎日のように行なっていた新兵器のテストによって危険を察知する感覚が鋭くなっていて、それが屋敷のセキリュティの突破に役立っているようだった。


「随分と奥に来れたな、コラックよぉ?」


「そうだな。しかしガードロボットがいる重要施設ってのは一体どこにあるんだ?」


 ある程度屋敷の奥まで進んだコラックとウーボは、八体のガードロボットが守っているという屋敷の重要施設が何処にあるか探そうとする。二人の目的は重要施設を守っているガードロボットを倒すことで黒翼・ヘビー・マシーナリーから解放されることであり、周囲を見回しているコラックとウーボに何者かが合成音声を使って話しかけてきた。


「ソレナラ安心シロ」


「重要施設ノ一ツハコノ先ノ部屋ダ」


『『………!?』』


 コラックとウーボが声のしてきた方を見ると、そこには背中に鳥のような翼を生やして頭部にも鳥のような仮面をつけた人型ロボットと、背中に四本の触手を生やして両腕に鉄球をつけた人型ロボットの姿があった。


「私ノ名ハ『サイレント・ガイ』。コノ屋敷ノ警備ヲ司ドル八体ノガードロボットノ一体ダ」


「俺ハ『バインド・ガイ』。同ジク八体ノガードロボットノ一体」


 鳥のような翼と仮面を持つロボットのサイレント・ガイと背中に触手を生やしたロボットのバインド・ガイが名乗ると、いきなり強敵が二体同時に現れたことにコラックとウーボが冷や汗を流す。


「八体のガードロボットが二体も現れるって、どういうことだよぉ……?」


「……どうやらこの先にあるのは屋敷の中でも特に重要な施設らしいな?」


 コラックの言葉にサイレント・ガイとバインド・ガイの二体のガードロボットは同時に頷き答える。


「オ前ノ言ウ通リ、コノ先ニアルノハ屋敷デ特ニ重要ナ場所ダ」


「コノ先ハ、ジョット様達ノ寝室。決シテ他者ニ侵入サレナイヨウニ俺達二人ガ配備サレテイル」


「はぁっ!? 寝室? 発電施設でもセキリュティシステムのコントロールルームでもなくて、ただの寝室?」


「確かに重要施設かもしれないけどよぉ……」


 この先にある二体のガードロボットが守っている部屋がジョット達の寝室だと聞いてコラックもウーボも呆れたような表情となるが、サイレント・ガイとバインド・ガイは自らの使命を何の迷いもなく実行しようとする。


「サテ、話ハココデ終ワリダ」


「貴様達ハ俺達ノ手デ排除スル」


「えっ!? い、いや、ちょっと待て!」


「二人同時になんて大げさすぎねぇか? せめてどちらか一体だけでよぉ……!」


 サイレント・ガイとバインド・ガイの言葉を聞いてコラックとウーボは何かを言おうとするが、二体のガードロボットは耳を貸さずに二人の侵入者の排除を実行し、その直後に二人の男の悲鳴が屋敷内に響き渡った。






〜後書き〜

 ガードロボットの一体であるサイレント・ガイは、両腕両足に仕込んであるブレードと、ブレードと化した背中の翼を使った高速無音戦闘を得意としていて、

 同じくガードロボットの一体であるバインド・ガイは、背中にある四本の触手と両腕にある鎖付き鉄球を使った敵の捕縛に重点を置いた戦闘を得意としている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る