第513話
シャルロットとの会話から数日後。ジョット達はギラーレ同盟の本国であるコロニー郡からある場所へと向かっていた。
そのジョット達の目的地とは、以前彼がマーシャとセレディスとシレイアとの婚約が認められた時に大清光帝国から領地として与えられた、生物の生存が可能な開発済みの惑星であった。
「でも、どうして急にあの星に行くんだ?」
領地の惑星へと向かっている途中、魅火鎚のブリッジで何故このタイミングで向かうのかとジョットが聞くと、質問をされたシャルロットが首を傾げる。
「あら? ジョットさん、通知書を見ていなかったのですか? 私の婚約発表に、シレイア様とマーシャさんとセレディスさんの結婚式、その全てをジョットさんの領地の惑星で行うのですよ?」
「えっ? そうなのか?」
大清光帝国から送られてきた通知書はジョットも目を通していたが、まだ貴族になったばかりで難解な言い回しが多い書類を読むのに慣れていない彼は、何とか自分が婚約と結婚式を行う部分は理解できたのだが、その会場については見逃していたのだった。
ジョットが周囲を見回すと、ブリッジにいる彼以外の全員は何処で婚約発表と結婚式を行うのか知っていたようで頷いてみせて、それを確認すると今度はシレイアがジョットに話しかける。
「今回私達がジョット様の惑星に向かうのは結婚式の式場の下見のためでもあるのですが、それだけではないのですよ?」
「それ以外に何か目的があるのか?」
「はい。……ジョット様は、お父様がジョット様の惑星の施設を造ってくださっていることは覚えていますか?」
「……ああ、覚えているよ。忘れられるわけがないだろ……?」
シレイアに質問をしたジョットは逆に聞き返されると遠い目となって答えた。
ジョットは以前、シレイアを溺愛している彼女の父親……大清光帝国の皇帝に決闘を挑まれたことがあった。
しかしその時の皇帝は娘を奪ったジョットへの怒りのあまり、一対一の決闘のはずなのに護衛の機士を連れてきたりする等の卑怯……というよりも大人げない戦いをして、これには当人のジョット以上にシレイアやマーシャ、セレディス達が大激怒。そしてジョットが決闘に勝つと皇帝は、大人げない戦いをした償いとしてジョットの惑星を発展させるための施設を自費で造ることを約束したのである。
「そのお父様が造ってくださっている施設に、私達が一緒に暮らすための屋敷もあるのです」
「俺達の屋敷……? そうなんだ? じゃあ、結婚式の式場と一緒にその屋敷も見に行くってことか」
「そうです。……色々と気になることがありますから」
自分達が暮らす屋敷が作られていることを初めて知ったジョットが内心で驚きながら聞くと、シレイアはそれに頷いた後、視線をジョットからマリーへと向けてどこか意味深な言葉を呟いた。
「………」
シレイアに視線を向けられたマリーは、顔に大量の冷や汗を流しながら必死に目を逸らしているのだが、シレイアはそんなことはお構いなしに目の笑っていない冷笑を浮かべて世間話をするかのようにマリーに話しかける。
「これは私も最近知ったのですけど、私達の屋敷の建設が始まってすぐに、黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者の方々が協力を申し出てくれたそうですね? 建設業者の方々も、屋敷に暮らす人の中に黒翼・ヘビー・マシーナリーの社長令嬢のマリー様がいるということで協力を受けたのですが、今では屋敷の建設は黒翼・ヘビー・マシーナリーがほとんど取り仕切っていると聞きましたよ?」
『『…………!?』』
シレイアの話を聞いてジョットを初めとするこの場にいる全員が、嫌な予感を覚えて一斉にマリーを見る。マリーは相変わらず無言で誰とも目を合わせようとしないのだが、その態度がシレイアの話が正しいということを何よりも雄弁に語っていた。
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