第512話
シャルロットが惑星ファイトスの領主の血縁者だと知ったジョットは一瞬目眩がした。
「……本当に俺の周りって何なんだ? 兵器メーカーの社長令嬢とか隣国の王族の関係者とか皇族とか、俺の周りって濃い人間しかいないのか?」
「辺境コロニーの平民から貴族に出世して、その濃い人間達と結婚した旦那様も十分過ぎるくらい濃いと思われますが?」
「……」
ジョットが思わず今更すぎる本音を口にすると即座にムムが言葉を返し、それにペルルが無言で頷き肯定する。
「う……。で、でもシャルロットは俺と婚約して良かったのか? 将来性があると思ってくれているのは嬉しいけど、今の俺には権力とかは全くないぞ?」
ムムとペルルの視線から逃れるようにジョットがシャルロットに自分と婚約してもいいのかと聞くと、シャルロットは迷うことなく頷いた。
「はい。そのことは知っていますよ。そして資金と将来の人脈を作るためにジョットさんが傭兵学徒の仕事を受けていることも。ジョットさんとアレス・グラディウスでしたら、すぐに資金も人脈も作れますよ」
「……随分と俺のことを信頼してくれているんだな? いや、それとも信頼しているのはアレス・グラディウスの方か?」
ジョットのアレス・グラディウスには正銀工房の技術も使われており、だからシャルロットはアレス・グラディウスの力があれば傭兵学徒の仕事も間違いなく成功すると思っているのではとジョットが言うと、シャルロットは特に反論することなく返事をする。
「そうですね。我が社の技術が使われているアレス・グラディウスの力を信用しているのは事実です。ですがそれ以上に私はジョットさんの実力を信用しているのですよ」
このシャルロットの言葉には、話を聞いていた他の女性達も異論が無いのか静かに頷いていた。
「ただ実力が高いだけでなく、初めて乗る機体でもその性能を完全に引き出せる才能……。技術者としてはジョットさんはとても魅力的な方に見えますよ」
そう言うとシャルロットは頬を赤く染め、それを見て他の女性達は若干面白くなさそうな表情となり、特にマリーは悔しそうな顔をしていた。
「ぐぬぬぬぬ……! やっぱりシャルロットもジョット君に目をつけていたのね……。でもまさかこんな形でジョット君に近づいてくるだなんて……!」
「ふふっ♩ 残念でしたね、マリーさん? 今だから言いますけど私、ずっとジョットさんと一緒にいるマリーさんが羨ましかったんですよ?」
確かに技術者であるマリーにとって、自分の作った兵器を即座に使いこなして活躍をするジョットは非常に相性が良いパートナーで、同じく技術者であるシャルロットが羨ましく思うのも仕方がないだろう。
悔しがるマリーに自分の本音を伝えたシャルロットは、次にジョットの手を取ると彼の目をまっすぐに見て言った。
「ジョットさん。私はこの婚約は嫌がっておらず、むしろ嬉しく思っています。そしてこれからも戦うジョットさんを一人の技術者として、一人の女として支えます。ですからこれからどうかよろしくお願いします」
「あ、ああ……。こちらこそ、お願いします」
自分の目を見て嬉しそうに微笑みながら言うシャルロットに、ジョットは彼女の気持ちに若干気圧されながらも頷き、こうしてジョットとシャルロットの婚約が本人同士で認められたのだった。
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