第505話

「そうだね。ジョット君の言う通り」


「中途半端な攻撃では逆に相手の手数を増やしてしまうのだったら……」


「中途半端ではない攻撃で跡形も無く吹き飛ばせばいいだけです」


 マーシャ、セレディス、シレイアの三人がそう言うと、まず最初にシレイアが操るミレス・チャリオットが行動を開始した。


 ミレス・チャリオットのロボットの腰の後ろに繋がっている円盤状のスラスター兼武装格納庫。そこから十二種類の手動式武装がミレス・チャリオットの周囲に放たれて一度動きを止めたかと思うと、それぞれ形状が全く異なる十二種類の巨大な武器は複雑な軌道を描いて1672番のゲムマへと向かっていき、ゲムマの身体から無数に伸びている触手の数本を断ち斬った。


 触手はゲムマの身体から斬り落とされても1672番に操作されて動くことができる。しかしゲムマの身体から斬り落とされた時の衝撃でほんの一瞬だけ動きが止まり、その動きが止まった一瞬の隙を突いてミレス・チャリオットはスラスター兼格納庫と繋がっている二本の巨大アームからそれぞれ強力なビームソードを作り出して振り下ろし、斬り落とされた数本の触手を消滅させた。


「お前達! 円陣を組め!」


 シレイアの次に攻撃を開始したのはセレディスだった。


 セレディスが命令を出すと彼女のミレス・スパルトイから分離して変形した兵士のロボット達が、ミレス・スパルトイを中心として集まって剣を構える。するとミレス・スパルトイと兵士のロボット達の剣にエネルギーが充填されて刀身が輝きだした。


「舞え! お前達!」


 セレディスの合図と同時にミレス・スパルトイと兵士のロボット達がその場で剣舞を舞うと、ミレス・スパルトイと兵士のロボット達の剣からビームの刃が伸びる。剣から伸びたビームの刃は一本一本はただゲムマの触手の一部を消滅させて斬り落とすだけの結果しか出さないが、剣舞によって剣が振るわれる度に放たれるビームの刃はやがて「線」から「面」となり、1672番のゲムマの触手数本を完全に消滅させる。


「よく考えると私の機体の攻撃方法って、相手と似ているんだよね。……何だかちょっと複雑かも」


 シレイアとセレディスが1672番のゲムマの触手を消滅させていくのを見ていたマーシャは、自分の新しい機体の攻撃方法が相手に似ていることに気づき、若干複雑な表情を浮かべながらも攻撃を開始した。


「1672番。貴方の触手は確かに数が多いし厄介だけど、私の蛇達も素敵に凶悪なんだよ? ミレス・ヒュドラー!」


 マーシャの言葉に応えてミレス・ヒュドラーの背中にある巨大な円盤のようなバックパックと繋がっている数本の巨大な蛇腹剣が一斉にゲムマの触手へと伸びていく。先程まではゲムマの触手がジョット達を囲い込もうと動いていたのだが、今度はミレス・ヒュドラーの蛇腹剣が触手を包み込む動きを見せて、ビームのエネルギーを帯びた蛇腹剣の刀身はゲムマの触手を閉じ込めるとそれを一瞬で消滅させた。


「………」


 ゲムマから伸ばした触手を全て、ほんの数秒で完全に消滅させられたが、それでも1672番は特に驚いた様子も怒った様子も見せず、むしろ楽しそうな表情を浮かべていた。触手などすぐに伸ばせるし、今は人類がこれからどれだけ自分達との遊び戦いを盛り上げてくれるかの方が興味があった。


 そう考える1672番の視線の先には自身の専用武装天貫光アマヌキノヒカリを構えているジョットのアレス・グラディウスの姿が見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る