第501話

 ジョット達がいる戦場に現れたのは二体のゲムマであった。


 一体は鎧を着た戦士のような外見をした灰色のゲムマで、もう一体は表面に何の突起も起伏もないのっぺらぼうな黒色のゲムマ。そして二体のゲムマの上空には宇宙服も着ずに宇宙空間に浮かんでいる二人の男、1672番と6567番の姿が見えた。


「……ッチ! また随分と好き勝手にやってくれたな? 俺のミレス・マキナと宇宙戦艦をほとんど壊してくれやがって……ここまで数を揃えるのにどれだけ苦労したと思っている?」


 6567番は周囲にあるジョット達の手によって破壊されたミレス・マキナと宇宙戦艦の残骸を見て苛立った口調で言う。実際にここにあるミレス・マキナと宇宙戦艦を作ったのはギラーレ同盟で、6567番はそれを奪っただけで大した苦労はしていないのだが、その事について言う者はいなかった。


「それで……お前か? 前に俺の邪魔をしたって言う人間は?」


「ああ、そうみたいだな」


 アレス・グラディウスと一体化したジョットに6567番は敵意のこもった視線を向ける。


 以前、ミレス・マキナとの遊び戦いに飽きた6567番は新しい遊びとして人類狩りを提案してそれを実行しようとしたのだが、偶然その場に居合わせたジョットによって阻止された。そしてその功績によって貴族へとなったジョットが頷き答えると、6567番は不機嫌そうな表情を浮かべる。


「ちょうどいい。貴様はここで俺が潰してやる。人類がどれだけ頑張っても俺には勝てないってことを教えてや……?」


「……」


 6567番が自分の戦闘用の分身、灰色のゲムマでジョット達に攻撃を仕掛けようとした時、1672番が6567番の肩に手を置いた。


「あ? 何の真似だよ、1672番?」


「……もう十分遊んだだろ? 次はボクの番だ」


「1672番が喋った? 初めて聞いた……」


 6567番に聞かれると1672番はゆっくりと口を開いて答え、ジョット達について来た9567番は1672番の声を初めて聞いて軽く驚く。


「はぁ? 初めて口をきいたと思ったら何、ふざけたことを言ってやがる? あのなぁ? あの人間は俺の邪魔をした、俺の獲物なんだよ。だからお前はすっこんで……」


「もう十分遊んだだろ? 次はボクの番だ」


 1672番は6567番の言葉を遮って先程と全く同じ台詞を言い、それに対して6567番が不機嫌だった表情を怒りにと変えた。


「……! あの人類は俺の獲物だって言ってるだろ! テメェ、いい加減に……!?」


「いい加減にするのはお前だ」


 1672番に怒鳴ろうとした6567番だったが途中で何かに気づき、その直後に6567番に異変が起こる。


「………!? な、何だ、コレ……? 分身から意識が引き離される? 本体からの精神波が吸い込まれているのか? でも、どこに吸い込まれて……?」


 突然6567番と彼の操るゲムマが身体を震わせる。その時の6567番は自分に何が起きているのか全く分からない恐怖の表情を浮かべており、1672番はそんな6567番に冷たい視線を向けながら呟く。


「6567番。今だから言うけど、お前の言動はずっと不愉快だった。彼らは、人類は、ボク達の遊び戦いにいつも付き合ってくれている、ボク達の大切な友人対戦相手だ。それを馬鹿にして、無駄に殺そうとするお前にはもううんざりだ。……しばらくボクのゲムマの中で反省しろ」


「………!? まさか……まさか『あの話』は噂じゃなくて本当だったのか? わ、悪かった1672番! あの人類との戦いはお前に譲る! もう人類狩りをしたいだなんて言わない! だから! だからそれだけ、は………」


 言葉の途中で6567番と彼のゲムマは行動を停止し、その身体は力無く宇宙空間に漂うこととなった。そして……。


「………!」


 6567番の動きが止まるのと同時に、1672番が操る黒いゲムマののっぺらぼうな頭部にあるものが浮かび上がる。それは恐怖に歪んだ6567番の顔であった。

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