第499話

 6567番が操るミレス・マキナが戦場で暴れ回るジョット、マーシャ、セレディスの機体を取り囲もうとした時、同じく6567番が操る宇宙戦艦の一隻が突然爆散して船体から上がった爆炎と煙の中から一筋の閃光が飛び出した。


「ふふ……。皆さん、私のことを忘れないでくださいね?」


 爆炎と煙の中から飛び出た閃光はシレイアの新しい機体で、宇宙戦艦を沈めた彼女は次の敵を求めて戦場と飛びながら笑みを浮かべる。


「マリー様達は本当に良い仕事をしてくれましたね。この機体、『ミレス・チャリオット』は良い機体です」


 シレイアの新しい機体、ミレス・チャリオットは腰の後ろに、前の彼女の機体に取り付けられていた円盤状のスラスター兼武装の格納庫を強化したものが接続されていた。強化されたスラスター兼格納庫には巨大なアームが二本取り付けられていて、シレイアはその二本の巨大アームに内蔵されているビーム発射口を前方の宇宙戦艦に向けた。


「まずは一隻!」


 シレイアがスラスターの左側にあるアームから高出力のビームを放つと、アームから放たれたビームは宇宙戦艦の船体を貫いて一撃で撃沈させて、それを確認した彼女はスラスターの右側にあるアームを掌を天に掲げるような形で構えさせた。


「二隻目!」


 アームの掌の部分にあるビーム発射口から長大なビームの刃が発生すると、シレイアはそのビームの刃を振り下ろして別の宇宙戦艦を一撃で船体を斬り裂き撃沈する。


「見てくれましたか、ジョット様? 今のミレス・チャリオットの一撃を?」


「ああ、凄い威力だったな」


 二隻の宇宙戦艦を撃沈したシレイアが近くに来ていたジョットに話しかけると、彼は素直にミレス・チャリオットの武装の威力を認めて頷く。すると婚約者に認めてもらえたシレイアは頬を赤くして微笑む。


「ありがとうございます。……それにしてもジョット様も私も、遠距離から敵を攻撃する武装を持っていてお揃いですね?」


「待て。何を無理矢理、ジョットとの接点を作ろうとしている? そんなのは単なる偶然だろうが?」


 シレイアがジョットにそう言うと、セレディスが会話に加わってきた。


「偶然ではなくて、私のミレス・チャリオットとジョット様のアレス・グラディウスに遠距離から敵を攻撃する武装があるのは誰から見ても確かな事実ですよ。だから遠距離からの援護は私とジョット様に任せて、セレディス様はどうぞ前に進んでご活躍していてください」


「……あまり調子に乗るなよ? 新しい強力な機体を得たのは私も同じだ。どちらの機体が優れているのかここで白黒つけても良いのだぞ?」


 セレディスがシレイアの言葉に僅かな怒気を込めて言うと、話に置いて行かれたジョットにマーシャが近づいて来て話しかける。


「ねぇ、ジョット? あの二人、止めなくてもいいの?」


 マーシャの言葉にジョットと一体化したアレス・グラディウスが首を横に振る。


「あの二人が止めても聞かないのはマーシャも知っているだろ? まぁ、アレぐらいならいつもの意地の張り合いの範疇だし……二人とも言い合いながら敵と戦えているからな」


「……本当だ」


 アレス・グラディウスの視線の先では、どうやらどちらが多くのミレス・マキナと宇宙戦艦を落としたかで決着をつけることが決まったらしく、言い合いをしながら凄まじい速さでミレス・マキナと宇宙戦艦を次々と破壊していくセレディスとシレイアの姿があり、そんな二人の姿を見てマーシャが呟いた。


 そしてそうしている内にミレス・マキナと宇宙戦艦の数がもう数えられるくらいに減ると、ジョット達がいる戦場に二つの物体が高速で近づいてくるのであった。

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