第497話

「多目的兵装『天貫光アマヌキノヒカリ』起動」


 6567番が操る宇宙戦艦とミレス・マキナの集団へ向かって突撃しながらジョットは、アレス・グラディウスの背中にある武装、天貫光を起動させる。すると機体と天貫光を繋げるアームが動き、天貫光がアレス・グラディウスの背中から機体の右側へと移動する。


 そしてジョットと精神が一体化したアレス・グラディウスは両手で天貫光の内側である二つの取手を掴むと、まだ遥か先にいる宇宙戦艦とミレス・マキナの集団、その中にいる一体のミレス・マキナに狙いを定める。


「貫け!」


 アレス・グラディウスが両手で持って構えた天貫光を勢い良く前方へ突き出すと、天貫光の先端から強力な光が放たれて、その光は一瞬で遠く離れた一体のミレス・マキナに到達して頭部と胴体の大部分を蒸発させた。


『『………!?』』


 超遠距離からミレス・マキナにビームの砲撃を命中させたアレス・グラディウスの姿に、魅火鎚の護衛をしていた大清光帝国の軍人達は驚きを隠せずにいた。


 ミレス・マキナやゲムマを相手にビーム射撃は通用せず、精々牽制程度の効果しかないというのが、これまでの銀河の戦場の常識であった。そしてミレス・マキナやゲムマにビーム射撃が通用しない理由は、戦場を高速で動き回るために射撃の照準がつけ辛いことと、照準をつけても発射までにエネルギーの充填をする時間がかかってエネルギーの充填中に逃げられてしまうからだ。


 しかしアレス・グラディウスの天貫光は予めエネルギーの充填をしており、更にはビームキャノンではなく「一瞬だけビームの刃が展開する射程が長いビームランス」として扱うことで、狙いを定めると同時に超遠距離からの攻撃を行なってそれを命中させたのだ。


 もちろん予め大量のエネルギーを充填してそれを維持しながら戦闘を行うことは容易ではなく、普通の兵器で同じことをすれば充填したエネルギーが暴発する危険性があり、黒翼・ヘビー・マシーナリーを初めとする惑星ファイトスの兵器メーカーの高い技術力を集めて作った天貫光だからこそ可能なのであった。


「まだまだ!」


 超遠距離から一体のミレス・マキナを狙撃して戦闘不能にしたジョットは、そこから続けて二度三度と天貫光を前方へと突き出し、その度に天貫光から放たれた高出力ビームが6567番に操られているミレス・マキナを戦闘不能にしていく。


「エネルギーの充填が切れてたか。……だったら!」


 天貫光が内部に充填されたエネルギーを全て使い果たしてエネルギーの充填を開始すると、ジョットは天貫光を構え直して、今度は宇宙戦艦の一隻に狙いを定める。


 6567番が操る宇宙戦艦とミレス・マキナの群れとはまだだいぶ距離があるのだが、アレス・グラディウスが動くのと同時に天貫光に内蔵されていた大型スラスターが起動して爆発的な加速を生み、僅か数秒で狙いを定めた宇宙戦艦へと到達した。そしてアレス・グラディウスは速度を緩めるどころか更に加速すると、天貫光の先端から展開した高出力のビームの刃で宇宙戦艦の船体を容易く貫き、そのまま別の宇宙戦艦数隻の船体も貫いて行動不能にしていった。


 アレス・グラディウスの天貫光はアレス・ランザのビームキャノンを元に設計されており、遠距離用の兵器としてだけでなく接近戦用の兵器としても使えてあらゆる距離から敵を攻撃できる機能を備えている。


 光を放ち、あるいは自ら光となって天を貫く。


 故に『天貫光アマヌキノヒカリ』。


 その名前が決して伊達ではないことがここに証明され、先陣を切ったジョットとアレス・グラディウスの姿を見てシレイアが口を開いた。


「流石ですね。新しい機体と武装だけでなく、それを使いこなしているジョット様。……素敵です」


「そうですね」


「だが、私達も負けてはいないぞ? 強くなったのはジョットだけではないということをゲムマ達に見せてやろうじゃないか」


 シレイアの言葉にマーシャとセレディスが頷き返事をすると、彼女達も新しい機体を宇宙戦艦とミレス・マキナの群れに向けるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る