第496話
「旦那様。6567番に操作されているギラーレ同盟の宇宙戦艦とミレス・マキナ、こちらへ向かって来ています」
「ああ、分かっている。……でもアレ、大丈夫なのか?」
魅火鎚の格納庫でジョットが戦闘機のコクピットの機器を操作していると、同じ戦闘機のコクピットに乗っているムムがモニターを確認して話しかけてきた。ジョットもコクピットにあるモニターから魅火鎚に向かって来ているギラーレ同盟の宇宙戦艦とミレス・マキナを確認しているのだが、その宇宙戦艦とミレス・マキナは全て飛んでいるだけでも機体に負荷がかかっているように見えて、今にもジェネレーターが暴走して爆発しそうであった。
「仕方がありません。元々作りが適当なギラーレ同盟の宇宙戦艦とミレス・マキナを、ロクに手入れもしないまま無茶な動かし方をしているのですから。壊れたらまたギラーレ同盟から奪ってきたらいいと6567番は思っているのでしょうね」
ムムの6567番の考えを理解した台詞に、常に無表情なジョットは内心で苦笑する。
「贅沢な話だよな。……まぁ、それは自分専用機を作ってもらった俺達にも言えることだけどな」
ジョットがそう言っている内に彼とムムを乗せた戦闘機、そしてジョットの新しい機体は魅火鎚のカタパルトへと運ばれて、戦闘機の機器が機体の出撃準備が完了したと搭乗者に報せてきた。
「よし、いよいよコイツの初陣だ……! 祭夏・ジョットにムム、『アレス・グラディウス』発進する! ………!」
ジョットが自分と従者、そして新しい機体の名を呼んで発進を宣言すると、カタパルトが作動してジョット達を魅火鎚の外へと発進させて、それと同時に彼の身体に殺人的な重圧が襲いかかる。あまりの重圧にジョットは一瞬気を失い、次に目を覚ますとすでに魅火鎚の外の宇宙空間にいて、彼の前方には戦闘機から離脱して飛んで行く機体の後ろ姿が見えた。
「改めて見ると凄い機体だよな……」
戦闘機のコクピットでジョットは前方を飛んで行く自分の新しい機体、アレス・グラディウスを見て呟く。
アレス・グラディウスのロボットの外見は前の機体、アレス・ランザと大差はなかったが、ロボットの背中にある装備は大きく異なっており、ロボットの全長よりも大きな柄のない剣のような外見の装備を背負っていた。そしてこの背中の装備こそが、黒翼・ヘビー・マシーナリーだけでなく正銀工房等の惑星ファイトスの兵器メーカーの技術力を結集して作り出されたアレス・グラディウスの最大の武器であった。
「ムム。他のミレス・マキナ部隊は?」
「はい。予定通り、魅火鎚と自分達を護衛できる位置に展開済みです」
ジョットに聞かれるとムムが即答する。
今回、ジョット達だけでなく大清光帝国の軍からも護衛として宇宙戦艦二隻とが同行しているのだが、護衛の宇宙戦艦のミレス・マキナ部隊では6567番のゲムマには対抗できないため、自分達の母艦と魅火鎚の防衛に徹してもらっていた。
「よし。それじゃあ、俺もそろそろ行くから戦闘機の操縦は任せた」
「承知しました。ご武運を」
ムムの言葉に頷き返してからジョットはアレス・グラディウスに精神を一体化させる。
「行くぞ、ゲムマ。この機体、アレス・グラディウスはギラーレ同盟のミレス・マキナとは一味違うぞ?」
ジョットはここにはいない6567番に向かってそう言うと、背中の武装に内蔵されている大型スラスターを起動させ、6567番が操る宇宙戦艦とミレス・マキナの群れに向かって高速で突撃をするのであった。
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