第495話

 ギラーレ同盟の本国であるコロニー郡がある宙域から数光年離れた宙域。そこでは五十を超える宇宙戦艦と三百を超えるミレス・マキナの集団がギラーレ同盟へと向かっていた。


 この集団の宇宙戦艦とミレス・マキナは全て、6567番が自分のゲムマの能力を使ってギラーレ同盟から奪い取ったものであり、集団の戦闘を移動する一隻の宇宙戦艦の上に6567番と彼のゲムマ、そして1672番の姿があった。


「俺様がちょっと本気を出したらこんなものだ。やっぱり人類なんて大したことはないな」


 宇宙戦艦の上に立つ6567番が周囲にあるギラーレ同盟から奪った宇宙戦艦とミレス・マキナを見渡して自慢気に言う。正直な話、ギラーレ同盟の宇宙戦艦やミレス・マキナの性能はお世辞でも高いとは言えないのだが、6567番は最初から使い捨ての道具とするつもりなので特に問題はなく、どちらかと言えば自分の力を誇示する役割の方が大きいと言えた。


 このしばらくの間、ギラーレ同盟を相手に連戦連勝を重ねている6567番は上機嫌でギラーレ同盟との戦いに集中していて、そんな仲間を見ていた1672番は6567番が人類狩りをすると言い出さないことに内心で安堵していたのだが、そんな矢先にさっきまで上機嫌だった6567番の表情が急に曇りはじめた。


「……だけど、最近ちょっと退屈だな。いい加減、弱い物イジメをするのも飽きてきたし、どうしたものかな?」


「……。………!?」


「ん? どうしたんだ、1672番? 急ににやけ出したりして……って?」


 6567番の言葉を聞いた1672番が眉をしかめて人類狩りをさせないように釘を刺しておくべきかと考えていると、何かを感じ取って遠くの方を見る。今まで無表情だったが今は何か面白いもの見つけたような笑みを浮かべている1672番に6567番が何事かと聞こうとすると、6567番も自分達の方に近づいてくる存在に気づく。


「この感じは9543番か? しかもアイツ以外にも何人か人類の気配を感じる。と言うことは……!?」


 9543番が最近ある人類に興味を抱いて行動を共にしていることは1672番のみならず6567番も知っており、更に言えばその人類と言うのが6567番の人類狩りを阻止したことも知っていた。


「へぇ……? そう言えば、あの人類とはいつかお礼をしてやろうと思っていたんだ。向こうから来てくれるなんて丁度いいじゃないか……!」


「……」


 自分の新しい遊び人類狩りを邪魔した人類が自分達の元へやって来たことを気づいた6567番は獰猛な笑みを浮かべると、宇宙戦艦の進行方向をギラーレ同盟の本国から9543番と一緒にいる人類がいる方へと変更する。そして1672番はそんな6567番の背中に興味深そうな視線を向けていた。


 1672番も、6567番がギラーレ同盟を襲撃してはそこの宇宙戦艦とミレス・マキナを奪い取るを繰り返すだけの行動に、内心では飽き飽きとしていのだ。だが9543番と一緒にいる人類は恐らく自分や6567番と戦う準備を備えているはずで、これから一体どのような遊び戦いとなるのか、今から楽しみで仕方がなかった。



「旦那様。前方から宇宙戦艦とミレス・マキナの反応が多数接近してきます。所属は全てギラーレ同盟のものですが、例のゲムマにコントロールを奪われたものだと思われます」


 魅火鎚の待機室でムムがレーダーからの情報をジョット達に伝えると、それに9543番が頷いてジョットに話しかける。


「うん。それで合っているよ。……それと1672番からジョット君達へ伝言。『楽しい一時を期待している』だってさ」


 1672番からの意思を感じた9543番が彼の伝言をジョットに伝えると、それを聞いてジョットではなくマリーが自信に満ちた顔で答える。


「安心しなさい。私達が作った自信作は絶対に貴方達ゲムマを退屈なんかさせないから。それじゃあジョット君に皆、よろしくね」


「……ああ、分かった」


 ジョットがマリーの言葉に返事をすると、ジョットを初めとする機士達は待機室から出て自分達の機体の元へと向かうのであった。

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