第493話

 ジョット達がギラーレ同盟が6567番の襲撃を受けたという報せを聞いた日から五日後。この五日間でギラーレ同盟は更に三回も6567番に襲撃されたのだった。


 6567番はギラーレ同盟の人間には手を出していないが、襲撃の度に多くのミレス・マキナや宇宙戦艦を支配下に置いて奪っていき、その事に驚異を感じたギラーレ同盟は何度も周辺の国々に救援要請を出したのだが……。


「大清光帝国だけでなくリューホウ王国や他の国々もギラーレ同盟の救援要請を無視するみたいだね」


「ここまで人望が無ければいっそ清々しいな」


 大清光帝国を初めとする多くの国々がギラーレ同盟からの救援要請を見送るという情報を知ってマーシャが呟くとセレディスが呆れる。


 ギラーレ同盟からの救援要請を受けた国々は、大清光帝国からゲムマが人類に戦いを仕掛けてくる目的が単なる「娯楽」であることを知らされていることと、6567番のゲムマの能力が未知数であることから、何かと理由をつけてギラーレ同盟の救援要請を断っていた。しかし救援要請を断る一番の理由は、どの様な形であれギラーレ同盟と関わりたくないというのが本音で、ここまで他の国々に嫌われるようになったギラーレ同盟を見るとセレディスが呆れるのも仕方がないことだろう。


「正直な話、私達もギラーレ同盟や6567番なんてゲムマに関わりたくないのだが……」


「それは無理な話だね」


 セレディスがそう言うと9543番が話に加わってきた。


「今は6567番も気持ち良く勝てているからギラーレ同盟に集中しているけど、いつかは大清光帝国にも来るはずだよ。……それにあの6567番がまたいつミレス・マキナとの戦いに飽きて人類狩りを思いつくか分からないからね。そうなる前に決着をつけないといけないと思うよ?」


「はぁ……。やっぱりそうなるのか……。ムム、俺達の機体はどうなっているんだ?」


 9543番の言葉を聞いてジョットはため息を吐くと、ムムに自分達の新しい機体の開発状態を確認する。


「はい。旦那様達の新しい機体の開発は順調過ぎるくらいに順調です。マリー様達、技術者の皆さんが大急ぎで作業を行なってくれています。ただマリー様達が作業に集中するあまり食事も睡眠もほとんどとっていなくて、いつ倒れるかが心配で全員のバイタルチェックが欠かせません」


「そ、そうか……。……もしもの時はマリー達のこと、頼んだぞ」


 マリー達が自分達の健康を度外視して作業に熱中していると聞いたジョットは彼女達のことを心配するのだが、今のマリー達は例え止めても聞かないことを知っているため、ムムに万が一の時にマリー達の看護を頼むのであった。


「でもいくらマリー様達が頑張ってくださっても、私達の機体の完成にはまだ時間がかかりますね」


「だったらその時間をギラーレ同盟に稼いでもらうとしよう。そもそもギラーレ同盟の奴らが私達の機体を奪おうとしなければ、こんな手間がかからずに済んだのだからな。自業自得だ」


 シレイアの言葉にセレディスはギラーレ同盟にせっかくの新型機を捕縛された時のことを思い出したのか、不機嫌そうに言い捨てる。セレディスの言葉はここにいる者達全員の気持ちでもあり、この瞬間からギラーレ同盟の孤独感な戦いが継続的されることが決定されたのであったが、ギラーレ同盟に同情する者は一人もいなかったらしい。

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