第491話

 ギラーレ同盟の本国は、百年前の新エネルギー開発実験の失敗で生物が生活できない環境に変えてしまった惑星ギラーレの周辺に建造した数百ものコロニー郡である。そしてコロニー郡の中にある兵器工場が集結したコロニーでは現在、大清光帝国との戦いのためにミレス・マキナと宇宙戦艦を製造していた。


「急げよ! 上は来週までに三百体のミレス・マキナと五十隻の戦艦を完成させろって言っているんだ! こんなペースじゃ間に合わないぞ!」


 兵器工場のコロニーで現場主任の男が部下達に大声で指示を飛ばすと、近くにいた作業員の一人が反論をする。


「ミレス・マキナはともかく戦艦五十隻は一週間じゃ無理ですよ。そんなに急いで作ってもまともな戦艦なんか作れませんって。下手したら移動中に分解するかもしれませんよ? いや、もしかしたらジェネレーターが暴走して爆散するかも……」


「そんなこと言われなくても分かっているよ。どうせいつもの遠隔操作で動かす特攻兵器にするつもりなんだから、とりあえず戦場まで保てばそれでいいんだよ」


『『………』』


 まとも技術者であれば怒るか呆れるしかない現場主任の言葉に、反論した作業員や他の作業員達が何かを色々と諦めた表情となって、完成度や安全性を度外視して作業の速度を速めようとしたその時、兵器工場のコロニー全体に緊急警報が鳴り響いた。緊急警報を聞いてコロニーにいる作業員が何事かとコロニー内部の各所に設置されているモニターを見ると、兵器工場のコロニーに接近している一体のゲムマの姿が映し出された。



「あそこで人類は玩具……確かミレス・マキナと言ったか? を作っているんだよな? だったらそんな大事な場所を攻め込まれたらすぐに人類もやって来るよな」


 ギラーレ同盟の兵器工場のコロニーから十数光年離れた宙域で6567番は一人呟き、自分の本体の惑星から採れた材料で作ったゲムマを兵器工場のコロニーへと向かわせる。すると彼の予想通り、兵器工場のコロニーの防衛部隊がすぐさま出動して、防衛部隊が操る数十機のミレス・マキナは6567番のゲムマを撃退するべく突撃を開始するのだが、6567番はそんなギラーレ同盟のミレス・マキナをつまらなそうに見ていた。


「相変わらず人類共ってのはワンパターンだねぇ……。数に揃えてのごり押し戦法ばかり。……もし俺達も数を揃えてきたらどうするんだろうなぁ?」


 6567番が嘲るような表情でそう言うと、彼の操るゲムマは両腕をギラーレ同盟のミレス・マキナ部隊に向ける。6567番のゲムマの両腕は一瞬で何倍にも膨張したかと思うと、次の瞬間には破裂してギラーレ同盟のミレス・マキナ部隊に無数の破片を散弾のように飛ばした。


「敵の攻撃か!?」


「ふん! この程度、大したダメージにはならな……何だ?」


「機体が動かない……!?」


 ギラーレ同盟のミレス・マキナ部隊は6567番が放った散弾を回避しようとするが、何機かは避け切れず被弾してしまう。6567番の散弾は威力がそれほどなかったのか、ミレス・マキナの装甲を貫くには至らなかったが、散弾を装甲に受けたミレス・マキナは突然動きが止まってしまい、その後更なる異変が起こる。


「うわっ!? いきなり何を? 俺達は味方だぞ!?」


「貴様ぁっ! 気でも狂ったのか!?」


「ち、違います! 機体が! 機体が勝手に!?」


「駄目だ! 機体のコントロールが効かない! 皆、逃げてくれ!」


 6567番のゲムマの攻撃を受けて動きが止まったギラーレ同盟の数機のミレス・マキナ。それらが再び動き出したかと思ったら味方に攻撃をし始め、その様子を見て6567番は悪戯が成功した悪童のような笑みを浮かべる。


「お前達が唯一俺達に勝っていて頼りにしていた戦力の数が崩されて、しかもせっかく用意した戦力を敵に利用された今、お前達はどう思っている? 人類共?」

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