第490話
「これは……何と言うか、凄いな?」
「凄いと言うか酷いと言った方が正しいんじゃない?」
シャルロット達、惑星ファイトスにある兵器メーカーの重役達が黒翼・ヘビー・マシーナリーにやって来てジョット達の新しい機体作りの手伝いを申し出た日の翌日。ジョットとマーシャは目の前の光景を見て思わず呟いた。
「まぁ、これは仕方がないんじゃないか?」
「ええ、皆さん昨日は徹夜だったようですから」
今ジョット達がいるのは黒翼・ヘビー・マシーナリーの建物内にある大人数が同時に作業ができる大型作業室で、そこではマリーやシャルロットを初めとする黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員達と協力を申し出た兵器メーカーの重役達が泥のように眠っており、ジョットとマーシャと一緒にマリー達の様子を見ていたセレディスとシレイアがジョットの言葉に答える。
昨日、マリー達黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達は、シャルロット達の提案を渋々とだが受け入れた。確かに装備も機能も全く別の新しい機体よりも、前の機体の装備と機能を強化した機体の方が浪漫があるし、それの実現には黒翼・ヘビー・マシーナリーには無い技術を持っている他の兵器メーカーの協力を得た方が早いと考えたからだ。
そしてジョット達の新しい機体作りのために協力することとなったマリーとシャルロット達、黒翼・ヘビー・マシーナリーと他の兵器メーカーの技術者達は早速、ジョット達の新しい機体をどの様にするのかの話し合いを始めたのだ。……機体の設計を行いながら。
マリー達はそれぞれ機体の設計を行いながらも意見を出し合い、機体の使う機能や武装が一つ決定する度に設計図を修正していき、話し合いと機体の設計を同時に行うマリー達は頭部と胴体が別々の意思で動いているかのようであった。そのようなことを徹夜でやったお陰でジョット達の新しい機体の設計図はわずか一晩で完成して、それを確認したマリー達は力尽きたように眠りにつき、現在黒翼・ヘビー・マシーナリーの工場ではロボットがジョット達の新しい機体の基本的な部分や材料を作ってくれていた。
「これなら新しい機体も思った以上に早く完成するだろうな。流石は大清光帝国が誇る兵器メーカーが集まる惑星ファイトスの底力……と言いたいところだが、ここまで勝手なことをして惑星ファイトスの領主は大丈夫なのか?」
セレディスはマリー達、惑星ファイトスの作業員達の技術力を賞賛しながら、惑星ファイトスを含めたこの宙域の領主の心配をする。いくらシャルロット達、他の兵器メーカーの協力を得るためとは言え、一般市民には秘匿するはずだった情報を漏らしたことにより領主に何かしらの罰則が下るのではないかとセレディスが思っていると、シレイアがそれに答える。
「それなら大丈夫です。お父様に確認をとったのですが、ゲムマに対抗できる機体の完成は大清光帝国にとっても急務でしたので、領主様の行動はそのために必要なことだと判断されて処罰無いそうです。……ただ一つ、問題があるとすれば……」
そこまで言ってシレイアは複雑な表情となってジョットの顔を見上げる。
「ん? どうした、シレイア?」
「あの……。ジョット様は知らないかもしれませんけどシャルロット様は……え?」
『『大変だ!』』
シレイアの視線に気づいたジョットに聞かれて彼女が何かを言おうとした時、ジョット達のいる作業室にサンダースとベックマンが血相を変えて飛び込んできた。
「サンダースとベックマン? 一体どうしたんだ? 今、マリー達が眠っているから静かにしてくれよ?」
「そんなことを言っている場合じゃないんだよ!?」
「サンダースの言う通りだ! ギラーレ同盟に今まで見たこともない未知のゲムマが現れたそうなんだ!」
『『……………!?』』
ジョットの言葉に対してサンダースとベックマンはついさっき届いたばかりの情報を言い放った。
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