第489話

「はい~!? ジョット君達の新しい機体作りに協力させろ? 一体全体何を言っているのよ、貴女は!?」


 シャルロットの言葉に最初に反応したのはやはりと言うか当然というかマリーで、彼女は怒りの声を上げるのだがシャルロットはそれに動じることなく聞き返す。


「何かご不満な点でも?」


「ご不満しかないわよ! ジョット君達の新しい機体作りは私達黒翼・ヘビー・マシーナリーだけの楽しみ……仕事なんだからね! 貴女達、他の兵器メーカーが出る幕なんてないの!」


「マリー、ちょっと落ち着け。自分の欲望が表に出ているぞ? ……それよりもさっき言った、俺達の事情を領主から聞いたって言うのは?」


 ジョットはシャルロットの言葉に叫び返すマリーを落ち着かせながら、気になったことをシャルロットに聞く。ジョット達の事情というのはつまり9543番達、ゲムマの正体に関することであり、国の上層部と一部の貴族にしか知らされておらず一般市民には公表されていないはずであった。


「……確か、惑星ファイトスを含めたこの宙域の領主はゲムマの正体について聞かされている数少ない貴族だったはずですね」


「それにここの領主とシャルロットは……なるほど、それで情報が伝わったのか」


 シレイアはこの辺りの宙域を支配している領主がゲムマの正体を知らされていることを思い出すと、セレディスはシャルロットが領主からゲムマの正体を聞かされてもおかしくないと納得する。


「いや、でも、ゲムマの正体を一般人に報せるのはマズイだろ?」


「ジョットさんの言うことはもっともです。……ですが領主様を責めないでください。ゲムマが本気を出したら私達人類ではそれに対抗する兵器が作れないだなんて言われて我慢できるはずがないじゃないですか……!」


 シャルロットとこの辺りの領主がどんな関係かは知らないが、国が秘匿することを決めた情報を一般人に報せるのは駄目なのではないかとジョットが言うとそれにシャルロットが反論する。どうやらゲムマの正体の情報と一緒に、以前8789番が人類では本気のゲムマに勝てる兵器は作れないと言った発言も聞いているらしく、シャルロットと彼女の後ろにいる兵器メーカーの重役達の目には怒りの炎が燃えていた。


「つい先日、ジョットさんが黒翼・ヘビー・マシーナリーの魅火鎚でギラーレ同盟の戦艦三隻を倒した情報を知って、私達も負けていられないと新兵器や新技術の開発に力を入れていた時に今回の話を聞きました。……私達にも長年この大清光帝国の軍事力を支えてきた誇りと意地があります。ですからお願いします。どうか私達にもゲムマと戦うためのジョットさん達の機体作りを手伝わせてもらえませんか」


「……言いたいことは分かったけどさ? でもやっぱりジョット君達の機体作りは私達、黒翼・ヘビー・マシーナリーの仕事なんだからさ……」


「断っていいんですか? 私達と協力した方が貴女達にとっても面白い話になると思いますよ?」


 シャルロット達がジョット達の新しい機体作りに協力を申し出た理由を聞いて納得したマリーは、それでもシャルロット達の提案を断ろうとしたのだが、シャルロットはマリーの言葉を遮って話しかけると自分が持っていた携帯端末を彼女に見せる。携帯端末にはマリーが自爆させたジョット達の新しい機体四機の設計図が映し出されていた。


「それってジョット君達の新しい機体の設計図? 一体どうやって……いいえ、それよりもこれがどうかしたの? 面白い話ってどういうこと?」


「貴女達、黒翼・ヘビー・マシーナリーが設計した設計図と、ギラーレ同盟との戦いで実際に戦っている姿を見ましたが……正直に言って若干つまらないですね?」


「何ですって!? 私達の最高傑作がつまらないってどういうつもり!?」


 シャルロットの言葉を聞いてマリーだけでなく黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達が怒りの表情を浮かべるのだが、シャルロットは特に動じることなく答える。


「確かに貴女達が作った例の四機の機体はどれも素晴らしかったです。ですけど、あれらは前の機体とは外見は似ていても中身は全くの別物です。……マリーさん、そして黒翼・ヘビー・マシーナリーの皆さんはそれでよろしいのですか?」


「……………つまり、どう言うこと?」


 マリーが質問をするとシャルロットは彼女の目をまっすぐに見返しながら答える。


「前の機体では本気のゲムマには勝てなかったから新しい機体を用意する……。その事には異論はありませんが、せっかくだったら全くの別物ではなく前の機体の長所を強化し、極めた機体を作ってリベンジした方が私達技術者の意地を見せられる……貴女達黒翼・ヘビー・マシーナリーで言うところの浪漫がある話だと思いませんか?」


『『………………………………………!?』』


 シャルロットの言葉を聞いて、マリーを初めとする黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達に稲妻が走り、彼女達の表情を見て手応えを感じたシャルロットは笑みをジョットに向けて浮かべると、畳み掛けるように話しかける。


「私達だったら、ジョットさん達の前の機体の長所を強化した新型機の開発……きっとお力になれると思いますよ?」






~後書き~

 今回までの流れは種な機動戦士に例えると、


1.バスターなGだと勝てなくなったから新しい機体を用意する。


2.新しい機体のカラミティなGが完成したけど、敵に奪われそうになったから自爆させた。


3.また新しい機体を作ることにしたけど「やっぱりカラミティなGよりもライトニングなバスターのGの方が色々と燃える展開になるんじゃない?」という意見が出た。


 と言った流れです。


 ちなみに作者は種な機動戦士に最初に登場する五体のGでは、バスターが一番好きです。

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