第487話

 ギラーレ同盟に捕縛されてしまったジョット達の新しい機体を自爆させたマリー。


 敵に利用されるのを防ぐためとは言え、自分と仲間達が必死に持てる全ての技術を使って作り上げた機体を自爆させてしまったことには、少なからず落ち込んでも仕方がないだろう。……普通だったら。


「いやー、派手に吹き飛んだわねー!」


「ああっ! 計算以上の爆発が出たよな」


「惑星崩壊レベルの威力で、星間国家共通法違反ギリギリだったわね」


 ギラーレ同盟の軍隊が撤退した後、黒翼・ヘビー・マシーナリーの工場内では、マリーを初めとする黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員達が和気藹々と話し合っていた。その話題は先程マリーがジョット達の新しい機体を自爆させたことで、全員自分達の最高傑作が失われたと言うのに悲壮感は全く感じられなかった。


「いや……? マリー? それに他の皆もそれでいいのか? せっかくの機体がろくに動かす前に壊れたんだぞ? というかマリーが自爆させたんだけど。俺が言うのも何だけど、何で落ち込んでいないんだ?」


 マリー達、黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員達に話しかけるジョットの言葉にマーシャ、セレディス、シレイアの三人が頷く。


 ジョット達も自分達の新しい機体が自爆したことに落ち込んでいて、作った本人であるマリー達はもっと落ち込んでいると思っていたのだが、そんなジョット達の考えとは裏腹にマリーは明るい表情で答える。


「ん? ああ、確かに壊れちゃったのは残念だったけど、壊れちゃったらまた一から作ればいいだけじゃない? 不幸中の幸いと言うか、調律したジェネレーターは無事なわけだったんだから。それよりも今はさっきの自爆装置の話よ、自爆装置! 今まで威力をセーブした自爆装置しか使えなくて、あそこまでの威力で自爆装置を使える機会なんて中々ないんだから!」


 興奮しているのか頬を赤くしながら言うマリーの言葉に黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員達は全員頷く。


「そうだな。今までは自爆装置の威力をセーブしないと、この会社を取り潰すって惑星ファイトスの領主に脅しをかけられていたからな。だけど今回のような非常事態だったら自爆装置の威力をセーブしなくても文句は出ないだろ。まぁ、あれでも本来の威力の七割程度なんだけどな」


「うんうん。確かにあの四機は少し勿体無かったが、代償を支払う代わりに敵に多大な一撃を与える……これこそが自爆の華と言うもの」


「そして自分達が必死で作り上げたものを自分達の手で壊すという、この何とも言えない感情もまた自爆装置の醍醐味だからね」


『『ええ……?』』


 自分達の最高傑作であった機体を失ったことよりも、思う存分自爆装置を使うことができた喜びの方が勝っているマリー達に、ジョット達は何も言えなくなった。黒翼・ヘビー・マシーナリーの人間が、自分達の作る兵器の全てに自爆装置を取り付けるくらいに自爆装置を愛しているのは十分に知っているつもりのジョット達であったが、その認識はまだまだ甘かったようである。


 ロボットが登場する物語では今回のような状況だと、せっかくの新しい機体が敵に利用されて危機的状況に陥ったり、敵に利用されるのは防げたが機体を失って皆が落ち込む展開になるのが普通なのだが、黒翼・ヘビー・マシーナリーにはそんな常識は通用しないようだった。

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