第485話

 惑星ファイトスから遠く離れた大清光帝国とギラーレ同盟の国境のある宙域では、大清光帝国とギラーレ同盟の軍隊による大規模な戦闘が行われていた。


 大清光帝国の軍隊はギラーレ同盟のミレス・マキナ部隊や戦艦を次々と沈めていき、それに対して自軍に対する被害はほとんどないのだが、大清光帝国の軍隊の指揮官達はそれに喜べる気分ではなかった。


「全く……。ギラーレ同盟の奴らめ、一体どれだけの数を持ってきているんだ?」


 大清光帝国の軍隊の旗艦のブリッジで、今ここにいる部隊の指揮官がぼやくように言う。もうすでに多くのギラーレ同盟の戦艦をミレス・マキナの部隊と一緒に破壊しているのだが、それでもまだギラーレ同盟の戦艦は大清光帝国の戦艦の二倍近い数がいた。


 幸いと言うべきかギラーレ同盟の戦艦とミレス・マキナの部隊は大清光帝国のものと比べてずっと戦力が低くあっさりと倒せるのだが、それでもこれだけの数がいるとなると指揮官はうんざりとした気分となる。


「ギラーレ同盟の奴らは兵器の質の悪さを数でカバーしていますからね。仕方がないかと」


 指揮官の呟きに隣に立つ副官が苦笑を浮かべて答えるが、それを聞いて指揮官は更に疲れたような目をして戦況を映し出しているモニターを見る。


「そしてその結果がこの戦法か……。実際にやられると鬱陶しいことこの上ないな」


 指揮官が見ているモニターの中では、ギラーレ同盟の戦艦がミレス・マキナ部隊と一緒に砲撃を行い突撃をしていた。大清光帝国のミレス・マキナ部隊は、ギラーレ同盟のミレス・マキナ部隊をすぐさま壊滅させると戦艦も同じくらい短い時間で破壊するのだが、ギラーレ同盟の戦艦はそれに臆することなく突撃を続けるのであった。


「コレばかりは……ミレス・マキナだけでなく戦艦も『無人機』である強みとしか言いようがないですね」


 副官も指揮官と同じ気持ちなのか、疲れたような目でモニターを見ながら呟く。


 現在大清光帝国の軍隊と戦っているギラーレ同盟の軍隊は、ミレス・マキナ部隊だけでなく戦艦までもが遠隔操作されているもので、ギラーレ同盟の軍人達はここから遥かに後方から戦艦やミレス・マキナ部隊を操っていた。


 ギラーレ同盟の軍人達がミレス・マキナ部隊だけでなく戦艦も後方から遠隔操作しているのは、自分達の兵器の質の悪さに理由がある。ギラーレ同盟の人間達はそのプライドの高さから「努力」という言葉からほど遠く、自分達ではまともな戦艦もミレス・マキナを作れないから他国の技術をコピー(もちろん星間国家共通法を違反している件多数)しているのに、そのコピーですら途中で手抜きをして満足に作れないという有り様。


 その結果、ギラーレ同盟が作る戦艦を初めとする兵器は三割か四割が最新なのにまとも動かなかったり、起動させると爆発するという、どこぞの自爆装置に浪漫を感じる兵器メーカーですあら呆れる動く棺桶みたいなものばかりであった。


 ギラーレ同盟の軍はこの質が低すぎる兵器を多く揃えることで辛うじて戦力を補っているのだが、肝心の戦艦に乗りたくないと言い出す軍人が大多数いるため、戦艦も遠隔操作で操るという戦法をとっていた。戦艦まで遠隔操作ではやはり直接操っている戦艦に比べて対応が遅くなることが多々あるのだが、今回のように最初から使い捨てにするつもり突撃特攻戦法ではそれなりに有用のようである。


「まあ、いい……。とにかく我が軍の優位を動かないのだから、無茶をせず数を減らしていくように全軍に徹底して……どうした?」


 指揮官が全軍に指示を出そうとした時、ブリッジにいる乗組員の一人が何か緊急の通信を受け、それに気づいた指揮官が聞くと乗組員が顔を青くして報告をする。


「そ、それが……惑星ファイトスがギラーレ同盟の攻撃を受けたそうで……しかも、そこで開発されていたシレイア様や祭夏・ジョットの機体が強奪されたそうです!」

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