第484話

 黒翼・ヘビー・マシーナリーでマリーを初めとする大勢の技術者達がジョットの新しい機体を作っていた頃。とある部屋では大勢の人達が集まって、部屋にある大型モニターに映し出されている映像を見ていた。


 部屋のモニターに映し出されているのは、ジョットの操る魅火鎚がギラーレ同盟の戦艦三隻と戦っている映像で、魅火鎚が船体を変形させながら戦艦では実現不可能な動きを見せたところで部屋に集まっている人達からざわめきが生じる。


「何だあの動きは……!?」


「とても戦艦が動きとは思えない……。人型に変形する巨大戦艦なんて正気の沙汰ではないと思っておったが、この動きを実現するためだったのか……?」


「いや、これは恐らく操縦している者の技術によるものだろう。……最も、それに応えられるこの艦の能力も凄まじいのだが」


「ミレス・マキナに変形する機能を与えることで、操縦者が機士ならば艦と一体化して操縦の精度を上げれるようにした、ということか……。考えてみれば簡単なことなのに、何故今まで思いつかなかったのか?」


「それは仕方がないだろう。巨大戦艦をミレス・マキナに変形させるなんて発想。普通ならばリスクが圧倒的に多く、考えるまでもないと思うはずだからな」


 部屋び集まっている人達は、しばらく魅火鎚の戦いぶりを見ながらそれぞれ自分達の思っていたことを口にしていたのだが、やがて全員がある一つの結論を出すのであった。


「どちらにしろ、これだけのことをした奴らを放っておくわけにはいかない。我々も奴らに対して行動をしなければな」


『『………』』


 部屋に集まっている人達の一人が代表するように言うと、他の人達も同意するように頷くのであった。



「……なぁ? そう言えば9543番の仲間ってのは一体どんな奴なんだ?」


 黒翼・ヘビー・マシーナリーの工場で作業を手伝っていたサンダースは、休憩時間に皆と集まっていた時に9543番に話しかける。するとジョット達も9543番に視線を向けた。


 確かにジョット達人類を見極めるために9543番の仲間が二人、今回の大清光帝国とギラーレ同盟の戦いに参加するだろうと言う話は彼女から聞いたが、それが一体どんな人物(?)なのかは今まで聞いたことがなかった。


「あー……。1672番と6567番ね。ワタシもろくに会話したことがないからよく知らないんだけど、周りは何を考えているか分からないタイプって言っていたかな?」


「何を考えているのか分からないって、一体どういうことだ? 何か問題でも起こすヤバい奴らなのか?」


 サンダースに聞かれて9543番は微妙な表情を浮かべて答えると、それに対して不安げな顔をしたベックマンが聞く。今回もまた現場からの報告係という貧乏くじを引かされたベックマンとしては、不安要素はできるだけ早く把握しておきたいのだろう。


「ええっと……。1672番は特に大きな動きを見せなくて、ただ自分が興味を持ったものを静かに観察しているだけで、特に問題を起こしたなんて話は聞いたことはないかな? 今回だって多分、普通に人類を観察して報告するだけだと思うよ? ……問題は6567番の方。6567番は気分屋でワガママで、自分が一番注目されていないと我慢できないってタイプで今まで何度も問題を起こしていて、何を考えて行動しているのか分からない、分かりたくもないって感じなの。ちなみに以前言った、ミレス・マキナとの戦いを止めて代わりに人類狩りを始めようって言い出したのも6567番だから」


「……1672番はともかく、6567番には俺達がいる銀河には来てほしくないな」


 ジョットが9543番の話を聞いて呟くと、他の皆も同じ気持ちで頷く。


「それでその1672番と6567番がこの銀河に来るのはいつなんだ? できるならその二人が来る前にジョット達の機体を完成させて、少しでも最悪の事態が起きた備えを用意したいからな」


 1672番と6567番がこの銀河に来たら、ただでさえギラーレ同盟が大清光帝国に宣戦布告をして大変な状態なのに、更に何か予想外なトラブルが起こるかもしれない。そう思って9543番に聞くベックマンだったが、話しかけられた9543番は首を傾げて答える。


「いつも何も、もう来ているよ? 1672番も6567番も、この銀河に来たらさっさとギラーレ同盟の方に行っちゃって、しょうがないからワタシだけジョット君達と合流したんだけど?」


「何っ!? 何だよ、それ? 聞いていないんだけど?」


 9543番の言葉は完全な初耳でジョットは思わず声を上げ、対してベックマンはというと……。


「…………………………ガハッ!」


 心労により白目をむき口から血を吐いて気絶し、それを見ていたムムが呟く。


「どうやらベックマン様には気絶ネタと吐血ネタが定着しつつあるようようですね」

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