第480話
《はぁっ!? 何でギラーレ同盟の戦艦が三隻もいるんだよ? そこ、大清光帝国の領地だろ!?》
ムムから魅火鎚にギラーレ同盟の宇宙戦艦が三隻近づいて来ているという報告を聞いて、モニターの中にいるサンダースが思わず驚きの声を上げる。
「ギラーレ同盟だからね。宣戦布告をしたから早速行動に出たんでしょう? 戦艦三隻しかいないところを見ると先行偵察か、適当に見つけた宇宙船を拿捕して物資を奪おうってところじゃない? どちらにしろあの三隻の戦艦の独断行動であるのには変わり無いわね」
マーシャがサンダースの疑問に答えると、それを聞いてサンダースは信じられないといった表情を浮かべる。
《……え? イヤイヤ? いくら何でもそれはないだろ? 戦艦三隻の独断行動を許すとかありえないだろ?》
「信じられない気持ちは分かるがそれがギラーレ同盟だ。ギラーレ同盟の軍隊を他の国の軍隊と同じだと思うと馬鹿を見るぞ?」
「セレディス様の言う通りですね。ギラーレ同盟の軍人の方々は軍の規約よりもご自身の感情と利益を優先される方が多いですから」
《………!》
今度はセレディスとシレイアに言われて絶句するサンダースだがそれも仕方がないだろう。いくら宣戦布告をした国が相手とは言え、軍からの命令も無しに先行偵察をしたり宇宙海賊紛いの行動を取る軍人など、もはや軍人ではなく宇宙海賊と言っても過言ではない。
「それであのギラーレ同盟の戦艦はどうしますか?」
「そうだな……。今は俺のアレス・ランザも他の皆のミレス・マキナも出せないし……」
ムムに聞かれてジョットがこれからどうするのか考えていると、彼の言葉を聞いたサンダースがジョットに声をかける。
《ちょっと待て? アレス・ランザや他のミレス・マキナが出せないってどう言うことだ?》
「ああ、実はな? 俺達の機体って蒼海珠でジェネレーターの調律をしてもらっただろ? その時からジェネレーターを機体から取り外したままなんだ」
《いや、何でだよ? 調律のために一回ジェネレーターを機体から取り外すのは分かるけどよ、何でその後に組み込んでいないんだよ?》
「しょうがないでしょう? 元々調律をしたジェネレーターは今開発している新しい機体に組み込む予定だったんだし。その前に別の機体に組み込んで起動させたら、せっかくのジェネレーターに『クセ』がついちゃうんだって」
サンダースの疑問に答えたのはジョットではなくマリーであった。
「いい? ジェネレーターには機体を効率良く動かせるように、その機体の各パーツにあった量のエネルギーを送るように調整する機能があるの。当然別の機体に移し替えたらまた新しくエネルギーの量を調整してくれるけど、前の機体にエネルギーを送っていた情報は残ったままでこれがさっき言った『クセ』ね。このクセがあるとエネルギーを送る調整に僅かな誤差が生じるの。……まあ、実際は動かすのには全然問題ないんだけどね」
《……いや、それだったら、やっぱりジェネレーターを機体に組み込んでいても良かったんじゃねぇか?》
マリーの説明を聞いてサンダースが至極最もな疑問を口にすると、マリーは首を横に振る。
「分かってないなぁ。これからせっかく調律をした最高のジェネレーターを使って最高のアレス・マキナとミレス・マキナを作るんだよ? ここまできたら一切の妥協なんて許されるわけないじゃない。サンダースってば、本当に技術者の浪漫が分かっていないんだから」
《そんなこと言われても俺、技術者じゃねぇし……。でもだったらどうするんだよ? ギラーレ同盟の戦艦に対抗する戦力なんてあるのか?》
「何を言っているんだ、サンダース? そんなもの、最初からあるじゃないか?」
マリーに向かって三隻のギラーレ同盟の宇宙戦艦に対抗する術があるのかと聞くサンダースに、ジョットは当然のように答えると魅火鎚の操縦席に座るのであった。
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