第478話
ガーディアンとは宇宙船内部や基地内部を警護するガードロボットの上位機種とも言える警備システムで、ガードロボットとの違いはパワードスーツを装備した侵入者に対抗できる攻撃力の有無である。
ミレス・マキナが入り込めない宇宙船内部や基地内部ではパワードスーツを装着した兵士が最大の戦力であり、万が一パワードスーツを装備した宇宙海賊に襲われた場合を考えれば、どこかの平民から貴族へ出世した青年とその妻に婚約者数人だけしか乗っていない宇宙船のような、乗組員が少人数しかいない宇宙船にとってガーディアンは必要不可欠な警備システムと言える。
しかしパワードスーツに対抗できるガーディアンの開発は非常に難しいものであった。
ただパワードスーツを破壊する攻撃力を持たせるだけならば簡単だが、守るべき宇宙や基地を破壊せずにパワードスーツを装備した敵戦力だけを排除するとなると至難の業だ。今までも様々な兵器メーカーや警備会社と契約している研究所が、宇宙船や基地の被害を最小にして敵戦力だけを排除するガーディアンの開発に取りかかってきたが、中々上手くいかずにいた。
そしてガーディアンの開発が難しい理由はもう一つある。それはガーディアンの攻撃用の実験データが中々得られないことであった。
科学技術が発達したこの世界では、攻撃試験用のロボットなどを用意するのは難しくはないが、ガーディアンはパワードスーツを装備した敵戦力……つまり人間との戦闘を想定した警備システムである以上、人間との戦闘データが開発に必要としていた。しかしパワードスーツを破壊できるだけの攻撃力なんて下手をしたら実験に協力してくれた人間も殺しかねないので、ガーディアンの戦闘テストに協力してくれる人材はそう簡単に見つからないのである。
それは黒翼・ヘビー・マシーナリーも同じで、いくつものガーディアンは開発していたが実際の人間を相手にした実験データが集まらず、基本的なシステムとボディは完成したがそこから先の細かい調整ができずにいた。
しかしそんな時、以前黒翼・ヘビー・マシーナリーが拘束していたギラーレ同盟の軍人達が、自分達の母国が大清光帝国に宣戦布告したという話を聞いて脱走を企てたのだ。
これを聞いて黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達は大歓喜。
何しろ今回脱走を企てたギラーレ同盟の軍人は、一歩間違えたら惑星ファイトスが壊滅してもおかしくない大事件を起こした戦犯で、ギラーレ同盟と大清光帝国は現在一応戦争状態。それに何より、このままだと建物内で破壊活動を行われる可能性があるので、早期対策を取る必要がある。
大義名分を得た黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達はそれぞれ自分達が開発したガーディアンを、建物内を五つの集団に別れて行動しているギラーレ同盟の軍人達の元へと差し向けて、その結果が……。
「ぎゃああああっ!?」
「な、何だ!? 何なんだよ、これはぁっ!?」
「く、来るな! コッチに来るんじゃあねぇ!」
「ま、待ってくれ! 俺を置いていかないでくれよぉ!?」
「バッ!? 足を掴むな! 離せ! 早く離さないとあの奇妙な物体が……うわぁ、来たぁ!?」
黒翼・ヘビー・マシーナリーの建物内では、ギラーレ同盟の軍人達が技術者達の作ったガーディアンから必死に逃げ回り、その様子はまさにパニックホラー映画のような地獄絵図であった。
この悪夢のようなギラーレ同盟の軍人達とガーディアンの群れの逃走劇は丸三日行われ、その間黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達は、今までやっていた仕事のことを完全に忘れ、自分達が開発したガーディアンの実験データの収集に専念していた。
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