第477話

 脱走をしたギラーレ同盟の軍人達は全員で五十人程で、五つに分かれた彼らはそれぞれ十人程で黒翼・ヘビー・マシーナリーが開発している機体と高速船を奪取するべく、黒翼・ヘビー・マシーナリーの建物内を探索していた。


 ……ちなみに最初はもっと大勢の、それこそ百人単位のギラーレ同盟の軍人達が黒翼・ヘビー・マシーナリーに拘束されていたのだが、そのほとんどは大清光帝国とギラーレ同盟との取り引きによってギラーレ同盟に返還されている。つまり今ここにいる彼らは、ギラーレ同盟にとって他国にお願いしてでも取り戻したいわけでもない、いてもいなくても特に問題がない人材というわけであった。


 すでに本国からも見捨てられていて、彼に新開発された四機の機体を奪取して無事帰国できたとしても、それほど明るい未来が開かれないのは明白。だがギラーレ同盟の軍人達はそんなことにも思い至らず、四機の機体を奪取して帰国すれば英雄のような扱いをしてもらえるはずだと信じて探索を続けていた。しかし……。


「……なぁ? 俺達、五つに分かれて行動しているけど、『5』って数字……何だか嫌な予感がしないか?」


 黒翼・ヘビー・マシーナリーの建物の探索中、ギラーレ同盟の軍人の一人が隣にいた同僚に話しかける。


「嫌な予感? それってどう言うことだ?」


「いや、ほら? 『5』って数字を聞くとさ? あの『怪人達』のことを思い出すんだよ、俺……」


『『…………………………!?』』


 ギラーレ同盟の軍人がそう言うと、同僚の軍人だけでなく話を聞いていた他の軍人達もが身体を強張らせる。話に出てきた五人の怪人達とは黒翼・ヘビー・マシーナリーにいる五人の技術者達のことであり、彼らは高い技術力を持っているのと同時に敵に対して軍人どころか殺人鬼と言っても過言ではないくらい高い殺意を持っており、その得意な外見も含めてギラーレ同盟の軍人達は「怪人」と呼んでいた。


 今から少し前にここにいる者達とは別のギラーレ同盟の軍人達が、惑星ファイトスの住民を人質に取って脱出しようとしたことがあったのだが、それも五人の怪人達によって鎮圧されたらしい。その時の軍人達は身体を震わせながら五人の怪人達の恐ろしさを語っており、ここにいるギラーレ同盟の軍人達にとって五人の怪人達はゲムマ以上に恐ろしい存在となっていたのである。


「お、おい、そこ! 無駄口を叩くな! いいから早く新開発の機体か高速船を……高速船を探すんだ!」


 十人いる軍人達の中で一番階級が高いリーダー役の男が話をしている二人の軍人に注意する。しかしリーダー役の男も五人の怪人達を恐れているのかその声は若干震えていて、新開発の機体よりも高速船を見つけようとする辺り、一刻も早くここから逃げ出したいのは明白であった。


「………ん? 何か聞こえなかったか?」


 そしてそんな話をしていると通路の向こう側から何かの物音が聞こえてきた。


 リーダー役の男を含めた軍人達が通路の向こう側を見ると、複数の小さな何かが近づいて来ていた。


「……玉? 一体これは何だ?」


 通路の向こう側から近づいて来たのは、拳大くらいの大きさ表面がゴムみたいな材質の玉であり、一人でに転がってくる玉を見てリーダー役の男が首を傾げたその時……。


「がっ!?」


『『……………え?』』


 こちらへ転がってやって来た玉の一つが突然、弾丸みたいな速度で軍人達の一人の顔に激突した。玉に顔を強打された軍人は一瞬で意識を失い、残った軍人達は何が起こったのか分からず呆けたような声を漏らす。


「ま、まさかこの玉は『ガーディアン』なのか……? ………ヒィッ!」


 リーダー役の男が恐る恐る床にある複数の玉を見て呟いた瞬間、他の玉は表面に無数のトゲを生やすとリーダー役の男を含めた軍人達に襲いかかるのであった。

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