第476話
ゲケッツとゴームと合流したギラーレ同盟の軍人達は、ひとまず黒翼・ヘビー・マシーナリーの建物内にある広い空間に集まって、これからどの様に脱走するのかを話し合うことにした。
ちなみに今ギラーレ同盟の軍人達がいる場所は、ゲケッツとゴームが初めてガンマニア教授と出会った試作兵器の稼働実験場で、ここに来るまで一人の黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員と出会わないどころかその気配すら感じられなかったのだが、ゲケッツとゴームも含めてそのことを気にするギラーレ同盟の軍人は一人もいなかった。
「それでは同志諸君。これからの我々の任務を説明する。我々の任務は今ここで開発されている複数の機体を奪取してギラーレ同盟に持ち帰ることである」
脱走を企てたギラーレ同盟の軍人達の中で一番階級の高い、黒翼・ヘビー・マシーナリーに囚われるまでは宇宙戦艦の艦長を務めていた男が、これからの予定を皆に告げる。
せっかくギラーレ同盟が大清光帝国に宣戦布告をしたという話を聞いた日に「運良く」警戒の目が緩くなり脱走できたのだから、このまま黒翼・ヘビー・マシーナリーから逃げればいいのに、「たまたま」ギラーレ同盟の宣戦布告の話と一緒にジョット達の新しい機体の話を聞いてしまったため、脱出ついでに手柄を得ようと元艦長の男は考えていた。そして元艦長の男の言葉に、やはりゲケッツとゴームを含めたギラーレ同盟の軍人達は誰も反対しないどころか、むしろやる気を見せるのであった。
「すでに本国の軍隊がこの大清光帝国を攻め入ろうとしているのだから、新しい機体と共に高速船を奪い取れば合流は難しくないだろう。しかし問題はその新しい機体と高速船を奪取することだ」
今まで誰とも出会わなかったので警戒心が緩んだのか、元艦長の男は声を落とすどころか大きめな声でその場にいるギラーレ同盟の軍人達に話しかける。
「これは『偶然』黒翼・ヘビー・マシーナリーの者達が話しているのを聞いた情報なのだが、どうやら黒翼・ヘビー・マシーナリーは我らの祖国の攻撃を警戒して開発中の四機の機体とそれを運べる高速船をそれぞれ別の場所に保管しているらしい。……どうやらこの黒翼・ヘビー・マシーナリーの狂人共にも最低限の警戒心があったらしいが、私の前でそんな重要な話をするだなんてあくまで最低限の警戒心だったようだ」
元艦長の男が黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員達の、重要情報をうっかり話してしまう警戒心の無さを馬鹿にするように言うと、他のギラーレ同盟の軍人達も馬鹿にするように笑う。
「そこで我々がするべきことは五つに分かれて新しい機体四機と高速船を奪取して、この狂人共の巣窟である黒翼・ヘビー・マシーナリーから脱出することだ。……それでは行くぞ」
元艦長の男の言葉にゲケッツとゴームを含めたギラーレ同盟の軍人達は五つに別れて黒翼・ヘビー・マシーナリーの建物の中を進んで行く。
ちなみに機体や高速船を奪取するための計画は全く無く、こんな杜撰な行動で曲がりなりにも兵器メーカーから機体や高速船を奪うだなんて不可能だろう。
……いや、それ以前にギラーレ同盟の軍人達はこれから地獄のような出来事を体感することになるのだった。
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