第474話

「……あぁ、もう、しょうがないね。こうなったらジョット君達の新しい機体の開発を急がせないといけないね」


 ギラーレ同盟が大清光帝国に宣戦布告をして、いつ攻め込んでくるか分からないと言う話を聞いてマリーは仕方なさそうにため息を吐く。


「マリー? 新しい機体が早くできるのは助かるけど、大丈夫なのか?」


「うん。その点は大丈夫……て言うか、私達黒翼・ヘビー・マシーナリーが手を抜いた作品機体を作ると思う? 皆の機体の設計図は最初から向こうに送っているし、開発作業の進捗状況は蒼海珠に向かっていた時からずっと通信で確認していたしね」


「ああ、そう言えば……」


 マリーに言われてジョットは蒼海珠へと向かっている途中、自分と婚約者達が甘い時間を送っている最中に黒翼・ヘビー・マシーナリーと何か連絡を取っていたのを思い出す。


 ……ちなみにマリーが黒翼・ヘビー・マシーナリーと連絡を取っている間、マーシャとセレディスとシレイア、ムムとペルルはマリーに見せつけるようにジョットに絡み、連絡が終わったらそれまでの分を取り戻すかのようにマリーがジョットに迫っていた。


「ジョット君達の新しい機体。開発や調整には実際に私も参加したかったし、Dr.スパイクヘッド達に全部任せると後で自慢されるから嫌なんだけど、ギラーレ同盟がいつ来るか分からないんだから仕方がないよね。Dr.スパイクヘッド達に機体を完成させるように………あれ?」


 黒翼・ヘビー・マシーナリーに連絡しようとしたマリーは、自分の携帯端末に黒翼・ヘビー・マシーナリーからの報告が来ていることに気づき、それを確認するとジョットに話しかける。


「ジョット君。ゴメンだけど、どうやら皆の新しい機体の開発、少し遅れるかもしれないね?」


「機体の完成が遅れる? 一体どうしたんだ?」


「実は……」


 ジョットに聞かれてマリーは苦笑を浮かべて黒翼・ヘビー・マシーナリーで起こった出来事を話し出した。



 時を少し遡る。


 そこは正気を失った狂人達によって支配されている罪人達の牢獄で、まさに混沌の地の底であった。混沌の地の底にある牢獄で、囚われている罪人達は日々精神を削られながらも過酷な作業を行い、自らの罪を償わされていた。


 罪人達はギラーレ同盟の軍人達で、過去に惑星ファイトスである極秘作戦を行おうとしたが、その途中でゲムマの大群と遭遇してしまい結果的にゲムマの大群を惑星ファイトスまで誘導すると言う、軍人としてあるまじき愚行を犯したのであった。


 ゲムマの大群を惑星ファイトスまで誘導した挙句、その対処を惑星ファイトスの防衛部隊に押し付けて自分達は早々に戦線離脱。更に実行しようとしていた極秘作戦というのが、当時惑星ファイトスのある兵器メーカーを攻め込み、そこで整備をしていたアレス・マキナの奪取するというもの。


 これらの責任から罪人達、ギラーレ同盟の軍人達は自分達が攻め込もうとしてい兵器メーカー、黒翼・ヘビー・マシーナリーの地下作業場で今日も精神的に過酷な作業を行わされていたのであった。


「おい? 聞いたか?」


 その日の作業が終わると、ギラーレ同盟の軍人の一人が同僚の軍人に話しかける。


「ん? 何だよ? ……悪いんだけど今日は……いいや、今日『も』疲れているんだ。話だったらまた今度に……」


 地下作業場での作業、こちらの行動を完全に操作されたパワードスーツを着て延々と人力発電機を動かすという作業によって、肉体的にはともかく精神的に疲労した軍人は疲れた顔でそう言うのだが、同僚はそれに構わず興奮したような目で話を始める。


「いいから聞けって。……これは黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員が話していたのを聞いたんだが、本国が大清光帝国に宣戦布告をしたらしいんだ」


「っ!? ……それは本当か?」


 小声で話してきた軍人の言葉に、同僚の軍人も疲れきった顔から驚いた顔となって自らも小声で聞き返す。


「本当だ。理由は分からないが、本国が宣戦布告をしたのは確からしい。……なぁ? これってもしかしたら……」


「ああ。この地獄から脱出できるチャンスが来たのかもしれないな」


 ギラーレ同盟の軍人の言葉に同盟の軍人が頷き、同様の会話が他のギラーレ同盟の軍人達の間でも行われていたのであった。

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