第473話
「なぁ……ちょっといいか? ギラーレ同盟が大清光帝国に宣戦布告をしてきたんだったら受ければいいんじゃないか? 確かギラーレ同盟ってそんなに強くないんだから、少し乱暴でもここで一気に叩いた方がいい気がするんだけど?」
ギラーレ同盟が大清光帝国に宣戦布告した話を聞いたジョットは、ギラーレ同盟の軍隊がセレディスの実家の私設軍だけでも対応できるくらいの実力だという話を思い出して発言する。
宣戦布告までされた以上はもう大清光帝国を責める気力を無くすくらいギラーレ同盟の軍を叩くしかなく、大清光帝国の軍事力ならばそれを十分に行えるのだが、シレイアとマーシャとセレディス、そしてモニターの中にいるサンダースは、ジョットの発言に対して微妙な表情となって首を横に振るのだった。
「え? 何? 俺、間違ったことを言ったか?」
《いや……。間違ってはいないし、俺もそうするしかないと思っているけどよぉ……。それができたら苦労はしないと言うか……》
言葉を濁しながら返事をするサンダースを見て、ジョットが彼の態度の意味が分からずにいると、マーシャが頭が痛いといった表情で自分の婚約者に話しかける。
「ジョット君……もう貴方は平民じゃなくて貴族なんだから、もうちょっと少し国の問題について勉強した方がいいよ? ……ギラーレ同盟って国は本当に厄介な国で、軍同士で戦って話がつくんだったら、もうとっくに何処かの国がギラーレ同盟に攻め込んでいるよ。ギラーレ同盟には大清光帝国だけじゃなくて、私達のリューホウ王国や他にも多くの国が迷惑をかけられているからね」
「……だったら何でどこの国もギラーレ同盟と戦おうとしないんだ?」
ジョットの質問にマーシャは心から嫌そうな顔となって口を開く。
「ジョット君。ギラーレ同盟には『宇宙一のワガママ国家』以外にも不名誉な異名があるんだけど、それが何か知っている?」
「ギラーレ同盟の不名誉な異名? 宇宙一のワガママ国家以外で? ……一体何だ?」
「『宇宙海賊の温床』」
「…………………………ハイ?」
ギラーレ同盟に「宇宙海賊の温床」という異名がついている事実に、ジョットは数秒間停止した後に思わず呆けた声を出し、マーシャが何故そのような異名がついたのか理由を説明する。
「ギラーレ同盟の国民のほとんどが異常なくらいプライドが高くてワガママなのはジョット君も知っているでしょ? だからギラーレ同盟の国民は仕事が上手くいかなくて生活が苦しくなると、すぐに『自分達が苦しい思いをするのは他の国々が悪い』とか言い出して宇宙海賊になるの。……実際、宇宙海賊の三割がギラーレ同盟の出身だって言う調査結果が出ているわ」
「……嘘だろ?」
『『…………』』
あまりにも酷すぎるギラーレ同盟の国民性の行動に、ジョットは流石にこれは冗談だろうと思い周囲を見回したのだが、マーシャとセレディス、シレイアにサンダースは苦い顔で黙っており、それが何よりも雄弁に真実であると物語っていた。
これはミレス・マキナという、民間人でも比較的手に入れ易く、撃墜されても「死」という最大の被害を避けられる兵器が広まった弊害とも言えた。
「要するに、馬鹿者に刃物を与えた場合の最たる例と言うことだ」
セレディスは吐き捨てるように言うとジョットに視線を向ける。
「ジョット。確かにギラーレ同盟ごときに勝つだけならすぐにできる。しかし完全にギラーレ同盟の軍事力を叩きのめすと、奴らは完全に開き直って大量の宇宙海賊になりかねん。だから大清光帝国も他の国も対応について考えているというわけだ」
もはや星間国家と言うよりも、凶悪なウィルスに感染していて感染拡大をいつしでかすか分からない害獣のような扱いのギラーレ同盟にジョットは何も言えなくなり、他の者逹もギラーレのについて頭を悩ませていた。
……そのためジョット逹は今まで無言で話を聞いていた9543番の呟きが聞こえていなかった。
「驚いた……。まさか6567番みたいな人類がそんなに沢山いるだなんて……」
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