第472話

《大清光帝国が人類とゲムマとの戦いの原因? 何を言っているんですか、シレイア様?》


 シレイアの言葉を聞いて魅火鎚のモニターの中にいるサンダースが訳が分からないといった表情を浮かべるのだが、それはジョット達も同じ気持ちであった。


「実は私達が蒼海珠を出発した頃、お父様は同盟国の上層部とこれからのゲムマへの対応を決める会議を開き、そこで9543番様から知ったゲムマの正体とその目的を報告したのですが、その時にギラーレ同盟がある一点に反応したのです。『ゲムマはミレス・マキナの存在に興味を持ち、それによって人類の戦いを積極的に行うようになった。つまりゲムマとの戦いの原因はミレス・マキナを開発した大清光帝国にある』。……ギラーレ同盟のそう主張しました」


「いや、まあ……ある意味そうかもしれないけどさぁ……?」


《何だよ、それ? ただの言いがかりじゃねぇッスか!?》


 シレイアの話を聞いて9543番が苦笑を浮かべて、サンダースが納得がいかないといった顔で大声を出す。


 確かに9543番達は人類が開発したミレス・マキナとアレス・マキナに興味を持って、ミレス・マキナとゲムマを戦い合わせる遊びを思いついた。その点だけを見ればギラーレ同盟の言う通り、人類とゲムマとの戦いの原因は大清光帝国にあるかもしれないが、例え大清光帝国がミレス・マキナとアレス・マキナを開発していなくても、9543番は自分達が何らかの形で人類に接触していただろうと思う。


「私も……いいえ、お父様達、大清光帝国の上層部もギラーレ同盟の主張がただの言いがかりでしかないと思っています。ですがギラーレ同盟は一歩も引かず、ゲムマとの戦いを引き起こした責任を取れと言い、大清光帝国に対して謝罪と多額の賠償を請求してきました。そしてこの賠償はお金だけでなく、今まで大清光帝国が秘密にしてきたジェネレーターのブラックボックスなどの機密情報も含まれています」


《………は? ギラーレ同盟の奴らは何を考えているんだ? いくら何でも無茶苦茶すぎないか?》


 ギラーレ同盟の言う、ゲムマとの戦いを引き起こした大清光帝国に対する賠償請求。その内容を聞いたサンダースは、あまりにも無茶苦茶な要求に苛立つのを通り越して呆れたように呟き、それにセレディスが忌々しそうに答える。


「ゲムマとの戦いの原因というのは単なる口実だろう。ギラーレ同盟は大清光帝国に対して強いライバル心を持っているからな。責める材料を見つけたことで舞い上がっているのだろうさ。それにこれでミレス・マキナのジェネレーターのブラックボックスの情報が手に入ったら、ギラーレ同盟の戦力は大きく向上するから、それも狙っているというわけだ」


 ミレス・マキナとアレス・マキナを開発したことで他の星間国家よりも高い戦力を持つ大清光帝国を、ギラーレ同盟が昔から一方的に敵視していたことは周知の事実であり、国民のほとんどがプライドが高すぎる上に自分勝手なため「宇宙一のワガママ国家」と言われているギラーレ同盟なら、セレディスの言った通りのことを企んでいても不思議ではなかった。


「そして大清光帝国の機密情報を狙っている方は他にもいるらしく、表立って賛成はしていませんが裏ではギラーレ同盟の意見を指示している同盟国がいくつもあって、これに強気になったギラーレ同盟は大清光帝国に宣戦布告をしてきたのです」


 セレディスの言葉を引き継ぎシレイアは、ギラーレ同盟が大清光帝国に宣戦布告してきた理由を説明したのであった。

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