二十二章

第470話

「………え?」


 ベックマンとの会話の後、自分の本体である惑星が存在する銀河に呼び戻された9543番は、自分を呼び出した188番の言葉に我が耳を疑った。


「あの……? それって本気なのですか?」


 9543番が質問をすると彼女の前にいる少年、188番は静かに頷いてからその外見とは似つかわしくない威厳を感じさせる声で答えた。


「我々は本気だ。人類が我々の力を知って絶望するか否か、我々は二体の仲間を使ってそれを確かめることに決定した。9543番にはその二体の仲間を例の人類、祭夏・ジョットだったか? 彼の元まで案内してもらいたい」


 188番は先日、9543番と8789番にゲムマは以前二度、知的生命体と接触したがそのどちらも自分達とゲムマの力の差に絶望して自ら滅んでいったことを話した。そして188番達は今回の人類も自分達との差に絶望して自滅の道を歩まないかどうかを確かめることに決めたようだが、そこで9543番は一つの疑問を抱いた。


「ジョット君の所に? 彼の行動だけで人類全体の評価を下すつもりなんですか?」


 人類全体の調査をするのだったら大きな戦場に仲間を送った方がいいはずなのに、ジョットの所に調査をする仲間を送ろうとする188番に9543番が聞くと、188番は首を横に振って答える。


「いいや。キミには見えないだろうが、祭夏・ジョットには無数の運命が集まろうとしている。恐らくは近いうちに彼の周りで大きな戦いが起こるだろう。そこに仲間達を送り人類の対応を見るつもりだ」


 188番はここではない遠く、ジョット達がいる銀河を見ながら答え、9543番は恐らく188番は自分みたいな若い惑星では見えない運命力の流れが見えているのだろうと納得して頷く。


「分かりました。……それでワタシが案内するのは一体誰と誰なんですか?」


「1672番と6567番だ」


「1672番と6567番!?」


 188番の人選……いいや、星選に9543番が思わず驚いた声を上げる。


「………!? 本気ですか!? 1672番はともかく、6567番は問題がありますって!」


 思わず自分より格上の存在である188番に意義を申し立てる9543番であったが、これには理由があった。


 1672番は別銀河にある人類を発見した存在で、人類との遊び戦いを最初に始めたのも1672番だった。だから人類の調査にはある意味うってつけの存在と言えるのだが……。


「6567番は人類との遊び戦いに飽きたから人類狩りをしようと言い出した、8789番以上の問題児なんですよ!? そんな奴を人類の大きな戦場に送ったら……!」


「間違いなく暴走して自分も戦いに参加しようとするだろうな。それも強化型ゲムマを使って」


「……!?」


 188番は9543番の言葉を遮って最悪の未来を口にし、それでも6567番を使うと言い、9543番を絶句させる。


「だが、それだからこそ人類が我々の力を知った時の反応が分かるのだ。……安心しろ。6567番の行動が目にあまれば止めるように1672番には言ってある。9543番、キミは1672番と6567番を案内すれば後は好きにしていい。8789番の時のように祭夏・ジョットと一緒に行動してもいいだろう。……頼んだぞ」


「……分かりました」


 自分より遥かに格上の存在である188番に命令された9543番は従うしかないのだが、彼女はこの時点から嫌な予感を感じるのであった。

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