第464話

 その後シレイアは大清光帝国の上層部にマーシャとセレディスの機体のジェネレーターを大清光帝国製に換える許可をもらい、更には技術局にジョット達の機体のジェネレーターの調律をしてもらうように依頼をした。本来ならばいくら皇族の人間の頼みとはいえ、他国の人間にジェネレーターを与えることも急なジェネレーターの調律の依頼も認められないのだが、8789番の強化型ゲムマを脅威と考えた上層部は、それと実際に戦ったジョット達の強化は必須であると考えてこれを承認するのだった。


 しかしやはり技術局は常に新しいジェネレーターの製造や研究で多忙を極めているため、ジェネレーターの調律が行われるのはジョットのアレス・ランザ、マーシャとセレディス、そしてシレイアのミレス・マキナだけとされた。


 そしてジェネレーターの購入と調律の許可を得た翌日、ジョット達はさっそく技術局がある大清光帝国の首都星、蒼海珠に向かうことにした。


 蒼海珠へと向かうのはジェネレーターの調律を受ける機体の持ち主であるジョット、マーシャ、セレディス、シレイアの四人、そこに機体の整備を担当しているマリーにジェネレーターの調律について知っているカーリー、ジョットとシレイアの侍女であるムムとペルルを加えた計八人。残りのジーナとルヴィアとベックマンの三人は黒翼・ヘビー・マシーナリーに残ることとなった。


 ちなみに9543番はいつの間にかいなくなっていたが、元々神出鬼没な上に別銀河の意思を持った惑星という規格外であるため、ジョット達全員が「よく今まで一緒にいたものだ」と思いあまり気にしていなかった。……ただし、9543番がいなくなった報告を聞いた大清光帝国の上層部は大騒ぎとなっていたが。


「本当にいいのか? 首都星になんて滅多に行けないんだぞ?」


 ジョットが一緒に蒼海珠に行かないのかとジーナ達三人に聞くと、ジーナは首を横に振って答える。


「私はいいよ。確かにジェネレーターを作っている技術局には興味があるけど、それよりもここでお兄ちゃん達の新しい機体を作る手伝いをしている方が面白そうだし」


 どうやらジーナはジェネレーターの調律よりも、Dr.スパイクヘッド達が製造に取り掛かっているジョット達の新しい機体の方に興味を持ったようである。そう言うジーナは黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員と同じ作業着を着ており、もうすっかり黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員といった感じであった。


「私はセレディス様からジーナさんのお世話と皆さんとの連絡をするように言われていますから」


「俺は……ジーナさんと同じようにここで皆の手伝いをしておくよ」


(あの人からもDr.スパイクヘッド達がどんな機体を作るのか見張っておけって言われたからな……)


 ルヴィアに続いて答えたベックマンは心の中で自分の言葉を付け足す。彼が残るのは、大清光帝国の高官からDr.スパイクヘッドを初めとする黒翼・ヘビー・マシーナリーが一体どんな機体を作るのかを監視してそれを報告するように依頼されたからだが、ベックマンが依頼された命令はそれだけではなかった。


(……だけど、見張るだけならともかく、明らかにヤバそうな機体を作っていたら止めろとか無茶すぎるだろ? 俺にあの白衣を着た狂人達を止められるわけないだろうが?)


 ベックマンは高官からの依頼を思い出して心の中で愚痴を漏らすと、胃痛を感じる腹部を手で抑える。


 そんなベックマンの心労に気づかず、ジーナはジョットに近づくと小声で話しかける。


「(それよりお兄ちゃん。皆と仲良くね?)」


「(? いつも仲良くしているつもりだが?)」


 ジョットも小声になって答えるとジーナは呆れたように首を横に振る。


「(分かってないなぁ……。何でセレディスさんがルヴィアさんをここに残したと思っているの? セレディスさんだけでなくて他の皆も、蒼海珠に行くのをお兄ちゃんとの新婚旅行か婚前旅行だと思っているよ?)」


「え……?」


 ジーナに言われてジョットが自分の妻と婚約者達に視線を向けると彼女達は皆、何かを期待するかのような目を自分に向けていることに気づいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る