第461話
マリーの一対一に特化した機体に改造しようという提案は、黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者だけでなく、ジョット達にも受け入れられた。これには元々ミレス・マキナとアレス・マキナの戦いが一対一に向いていることもあった。
それからジョット達は自分達の機体をどのように改造にするか、どんな武装を装備させるか意見を出しあった。そしてひとまず話し合いが終わり、ジョットがその日は休もうとすると……。
「シレイア? どうしたんだ、何か用か?」
黒翼・ヘビー・マシーナリーの建物内にあるジョット用に用意された部屋にシレイアとペルルが訪れていた。
「はい。今日はジョット様と一緒に寝ようかと思って来ました」
ジョットの質問にシレイアは当然のように答える。
「……はい?」
「……」
笑みを浮かべて言うシレイアの言葉にジョットが一瞬理解が遅れ、その間にシレイアの車椅子を押していたペルルは、彼女をおいて自分とシレイアの部屋に戻って行こうとする。ちなみにその時ペルルは一度だけジョットの方に視線を向け、無表情のまま右手の親指を立ててみせた。
「いや、おい? ペルル? どこに行くんだ?」
「ジョット様」
自分だけ部屋の帰ろうとするペルルを呼び止めようとするジョットの声を遮ってシレイアが彼の名前を呼ぶ。ジョットがシレイアを見下ろすと、車椅子に座っている彼女は彼に向かって両腕を広げてみせていた。
「ペルルがいないので車椅子が動かせません。抱き抱えて部屋に入れてくれませんか?」
別にペルルがいなくても車椅子を動かせるのだが、甘えるような声で頼んでくるシレイアには逆らえず、ジョットは彼女を抱き抱えて自分の部屋に招き入れた。
「シレイア。いきなりどうしたんだ?」
「別にいいじゃないですか。私達は婚約者同士なのですから、こうして愛し合っても」
ジョットの質問にシレイアは嬉しそうな笑みを浮かべながら答える。
「それにこれから私、ジョット様や皆さんのためにいっぱい骨を折るのですから、今日くらい役得があってもいいじゃないですか?」
「? どういうことだ?」
シレイアの言葉にジョットは意味が分からず首を傾げた。
「どういうことだ?」
シレイアがジョットの部屋に訪ねていた頃。黒翼・ヘビー・マシーナリーの作業員休憩所にて、セレディスが不機嫌そうな表情で奇しくもジョットと同じ言葉を言っていた。
セレディスの両隣には彼女と同じく不機嫌そうな顔をしたマーシャと苦笑を浮かべたカーリーがおり、三人の前にはマリーの姿があった。
「何でシレイアだけがジョットの部屋に行って、私達は行ってはいけないのか……。納得できる理由を聞かせてもらおうか?」
「……仕方がないじゃない」
セレディスの質問に、自分もシレイアだけがジョットの部屋にいることが不満なのかマリーも不満顔で答える。
「シレイア様には明日からジョット君や皆の機体の強化のために頑張ってもらうんだから、今日くらいは彼女のワガママを聞くしかないの」
「私達の機体の強化にシレイアの力が? どういうことだ?」
「ジェネレーターよ。皆の機体の強化にあたってまず、セレディスさんとマーシャの機体のジェネレーターを大清光帝国が作ったものに変えることにしたの。そのための説得をシレイア様に頼んだの」
マーシャとセレディスの機体に使われているジェネレーターは彼女達の祖国であるリューホウ王国が作ったものだが、これはミレス・マキナの本家と言える大清光帝国のジェネレーターを解析して作ったもので、大清光帝国のジェネレーターに比べて性能が劣っていた。だが大清光帝国のジェネレーターは基本的に大清光帝国の所属している者にしか販売されず、ジョットと婚約しているがリューホウ王国の人間でもあるマーシャとセレディスの機体には使用が禁じられているのだった。
しかしそこを何とか許可を出してもらおうと、マリーはシレイアに大清光帝国への交渉を頼み、その見返りが今晩のジョットと二人きりの時間なのである。
そしてマリーがシレイアに頼んだのはそれだけではなかった。
「それともう一つ、シレイア様には皆のジェネレーターの『調律』をしてもらうよう、政府直属の研究機関にお願いしてもらっているの」
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