第457話
ジョット達が9543番の強化型ゲムマと戦っていた頃。戦いに参加していなかったベックマンは黒翼・ヘビー・マシーナリーの工場で自分の携帯端末を見ていた。
「……………え?」
自分の携帯端末に送られてきた情報を見ていたベックマンだったが、その中にある一文を見て驚きの表情を浮かべる。するとそんな彼を見かけたドクトルダイバーが話しかけてきた。
「おや、ベックマン君? どうかしたのかね?」
「え? ああ、ドクトルダイバー。……いえ、高官から送られてきた9543番や8789番に対する大清光帝国の対応に関する情報を見ていたんですけど、どうやら大清光帝国は今回分かったゲムマの情報を同盟国に共有することに決めたそうです」
ベックマンが見ていたのは大清光帝国の高官からの情報で、そこには9543番と8789番の接触により判明したゲムマの正体を同盟国の上層部に報せるとあり、これにはドクトルダイバーも驚いた。
「何と? それは大清光帝国も中々思い切ったことをするね? ゲムマが人類に攻撃を仕掛けている理由がただのゲーム目的だと知られれば少なからず混乱が起こると思うのだがね?」
ドクトルダイバーを初めとする黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達は、すでにマリーの口からゲムマの正体や戦いの目的について聞かされている。そしてドクトルダイバーの言う通り、長年に渡って戦ってきた正体不明の敵であったゲムマが、実は別の銀河にある意思を持つ惑星が遠隔操作で操る兵器で、しかもそれが単なる遊び目的だと知ればどの国の上層部にも混乱が生じるだろう。
「俺もそう思います。大清光帝国も最初はゲムマの正体は秘密に、少なくともしばらくは黙っておくつもりだったようですけど、8789番の報告を聞いて考えを変えたようです」
「8789番……。例の随分とお転婆な彼女のことだね」
ベックマンから8789番の名前を聞いてドクトルダイバーは、以前見た彼女が「人類ではゲムマに勝てる兵器は作れない」と言っていた映像を思い出す。確かにあの映像はドクトルダイバー達、人類の技術者にとっては挑戦状を叩きつけるに等しいものであったが、ドクトルダイバー自身はあの自信に満ち溢れた態度に多少の好感を持っているようであった。
「そうです。これからは9543番や8789番みたいな興味本位で人類に接触して機密を話す者が現れるかもしれませんし、その中に8789番のように必要以上に場を混乱させる個体が出てくるかもしれません。そんなのが出てくる前に情報を共有した方が混乱が少ないだろう、と言うのが大清光帝国の判断らしいです」
「なるほど。突然の出来事に対処するための下地を作るわけだね」
ベックマンの言葉を聞いてドクトルダイバーは納得して頷いた。
「それでドクトルダイバーはこれからも9543番や8789番みたいな奴が現れると思いますか?」
「まず間違いなく現れるだろうね」
ベックマンがドクトルダイバーに聞くと、ドクトルダイバーはそれに即答する。
「マリー嬢達から聞いた話と例の映像から察するに、8789番は生粋のゲーマーであり私達と同じ技術者で、他のゲムマを操っている者達も似たり寄ったりなのだろう。そんな者達はね。他の者が自分だけ新しい物を作って楽しんでいる姿を見ると、自分もと行動するものなのだよ」
ドクトルダイバーには8789番やその仲間達の気持ちが理解できるのか、その言葉には妙な説得力があるような気がした。
「つまりゲムマとの戦いもこれから変わっていくと私は思うよ?」
「そうですか……」
ドクトルダイバーの言葉を聞いたベックマンは、これからそう遠くない未来に何かが起こりそうな、いい知れない不安を感じるのであった。
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