第455話
ベックマンが大清光帝国の高官に報告をしていた頃。ジョット達は火颶槌に乗って黒翼・ヘビー・マシーナリーがある惑星ファイトスから少し離れた宙域に来ていた。
「この辺りでいいの?」
「うん、そうだよ」
火颶槌のブリッジでマリーが聞くと、質問された9543番は頷いて答える。
「他の仲間や人類に気づかれないようにここまで移動させるのは結構大変だったよ。……それにしても君も随分と大胆なことを考えるね? ワタシのゲムマを使って研究したいだなんて」
ジョットのアレス・ランザを初めとする機体を強化するためにマリーが最初に取った行動は、9543番が作ったゲムマを調査してその能力を解析することだった。そして9543番は自分の作ったゲムマをこの宙域に向かわせており、マリー達はそのゲムマを回収して秘密裏に惑星ファイトスに運ぶためにここまでやって来たのである。
今までのゲムマは行動を停止すると破壊されずに残っていた身体の全て自壊して、身体の構造などを初めとする詳しい情報はほとんど分からないままであった。そこでマリーは8789番のゲムマ・ランザに対抗できる機体を作るためには、例のミレス・マキナの精神波を遮断する能力も含めてゲムマの身体の構造から今まで知られていなかった能力まで、ゲムマについて詳しく知るべきだと考えたのだ。
「しかもよりにもよって普通のゲムマじゃなくて、ワタシが独自に強化したゲムマを持ってこいだなんて……。ちょっと欲張りすぎじゃない?」
今回マリーが9543番に要求したのは、今まで戦ってきた鉱物が人の形に集まった普通のゲムマではなく、9543番が自分の本体である惑星で採れる資源を用いて特別に作った、8789番のゲムマ・ランザと同じ強化型のゲムマであった。そのことを9543番が呆れたような苦笑を浮かべながらマリーに指摘すると、マリーは首を横に振って答える。
「何を言っているのよ? 調べるのだったら相手の最新機から調べて、その情報全てを手に入れるのが一番でしょ? 普通のゲムマから調べていたら、その間にもあの
「何でそこまで断言できるんだよ?」
マリーと8789番、両者にはどこか似たところがあるのか、8789番の行動を予測したマリーはジョットの言葉を無視して断言する。
「……確かに8789番だったらあり得るかもね。それにしても、よくワタシも強化したゲムマを作っているって分かったね?」
「あの8789番のことだから、ゲムマ・ランザができた時に貴女や他の仲間達に散々自慢していたんじゃないの? それを聞いて面白くないと思った貴女も、実際には使う気はなかったけど自分だけの強化型ゲムマを作っていると思ったのよ」
物を作る者の気持ちを理解しているマリーの予想は見事的中しており、9543番は両手を上げて首を横に振る。
「ご明察。……降参だよ。まあ、ワタシのゲムマを調べてジョット君達の機体が強化されたら、人類との
9543番がそう言うと、火颶槌の前方に今まで見たこともない外見をした一体のゲムマが現れたのだった。
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