第454話
8789番との戦いを終えて惑星エイロンに帰ってからのジョット達……いいや、マリーの動きは速かった。
惑星エイロンに帰るまでの間、魅火鎚の中で自分を含めた全員分の休学届の書類を作成していたマリーは、惑星エイロンに到着するとすぐに真道学園にいるアレックスに休学届を提出。そして休学届を提出したその日のうちに黒翼・ヘビー・マシーナリーのある惑星ファイトスに出発した。
巨大戦艦の魅火鎚の内部にはジョット達の生活の拠点である火颶槌の他に、マーシャやセレディスの生活の拠点となっている宇宙船を格納していたのがすぐに動ける理由であったが、ジョット達がすぐに惑星ファイトスに向かったのにはもう一つの理由があった。
前の8789番との戦いでは彼女が自分の負けだと言っていたが、実際は8789番が用意したゲムマ・ランザを相手に何もできないままマーシャとセレディスのミレス・マキナを破壊され、こちらの敗北したのも同然だった。この事実にジョット達は怒りと危機感を覚え、もし8789番のゲムマ・ランザのようなゲムマが現れても対抗できる機体を早急に作り上げるべきだと考えたのである。
そのような理由からジョット達は自分達の機体を強化……魔改造をするために惑星ファイトスへと急ぎ向かったのだ。
……同じ宇宙船に乗って、8789番の戦いを同じくしたベックマンを連れて。
「……それで、今君達は黒翼・ ヘビー・マシーナリーにいるというわけか」
「……………はい」
黒翼・ヘビー・マシーナリーの本社にある通信室で、ベックマンは大清光帝国の高官と連絡をとっていた。通信室のモニターの中にいる高官は、ベックマンの話を聞くと頭痛をこらえるかのように額に手を当て、深いため息を吐いた。
「………はぁ。困るな、ベックマン君? ゲムマの正体については秘密にしておいてほしかったのだが?」
ゲムマの正体が別の銀河に存在する意思を持つ惑星が操る兵器である、という報告はすでに高官も聞いている。そして大清光帝国はこの事実を市民に余計な混乱を与えないように、上層部だけで秘匿しておくという方針に決めていた。
しかしマリーは8789番とゲムマ・ランザに対抗する兵器を作るため、黒翼・ヘビー・マシーナリーの技術者達にゲムマの正体について話しており、高官はそのことについてベックマンに愚痴のような言葉をこぼすのだが、これにはベックマンにも言い分があった。
「いや、無理を言わないでくださいよ? ……この状況で俺に何かできるわけないでしょう?」
「…………………………そうだったな。……すまない」
ベックマンがそう言うと、モニターの中の高官は彼の姿を見てから視線を逸らして謝罪をする。
現在ベックマンは拘束服を着せられた状態で椅子に座っており、その両隣にはパワードスーツを着てDr.スパイクヘッド特製の透明なモーニングスターを持ったモヒカン頭の黒翼・ヘビー・マシーナリーの職員と、同じくパワードスーツとステルスモーニングスターを装備したスキンヘッドの職員がいた。
彼らはベックマンが外部に何か余計なことを言って、ジョット達の魔改造が止められないようにするためにマリーがつけた見張り役であった。今のベックマンは機体を改造する作業以外では、満足に自室に割り当てられた部屋から自由に出ることもできず、この会話だって最低限の報告をしないと後々不味いことになると、必死にマリーを説得して許可をもらったのだ。
なし崩し的に真道学園を休学にさせられ、別の惑星に連れて来られた挙句、このような強面の監視役をつけられたベックマンに対し、高官も責める気にはなれなかった。
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