二十一章
第453話
とある建物の一室で数人の男女が集まり、彼らはその部屋に備え付けられている大型モニターに映し出された映像を見ていた。
大型モニターに映し出されている映像は、ジョット達と他の銀河にある意思を持つ惑星8789番とそれが作り出した強化型ゲムマ、ゲムマ・ランザが戦っている映像だった。しかし8789番はゲムマ・ランザが一方的に大清光帝国の機士、マーシャとセレディスのミレス・マキナを破壊した後、ジョットがトリックスターを発現する前に自ら負けを認めて戦いを止めており、戦いと言うよりも自分が作った作品のお披露目をしているといった印象であった。
そして大型モニターの中でゲムマ・ランザのお披露目を終えた8789番は、映像の中のジョット達に向かって次の言葉を言い放つ。
『今日の
『『………!?』』
8789番のこの言葉に数人の男女が反応し、部屋にいるマリーは映像を止めると部屋にいる数人の男女に話しかける。
「……さて、皆はこの発言を聞いてどう思う?」
そう言うマリーの顔は完全な無表情で数人の男女に向けた声は非常に冷たい。つまりそれだけ内心で怒っているということであり、それは彼女に話しかけられた数人の男女も同じであった。
「……そうだね。ゲムマの正体についても驚きだったけど、僕としては彼女のこの発言の方が驚きかな?」
最初に発言をしたのは、いたる所に鋭いトゲが生えた鉄仮面を被って白衣を羽織った長身の男、Dr.スパイクヘッド。彼はいつも通りの穏やかな声で答えるのだが、先程から机を指で何度も叩いていた。
「わ、わ、私も、スパイクヘッドに、ど、同感かな? ジョット君のトリックスターが、な、なければ、負けない、だなんて、す、す、す、凄い自信だね」
次に口を開いたのは頭にズダ袋を被って素顔を隠し、背中や腰に形状も大きさも異なる複数の刀剣を身につけた女性、プロフェッサーRRで、言葉を発する度に彼女が身につけている刀剣が揺れて金属音を発する。
「しかし映像を見る限り、大清光帝国の機士達のミレス・マキナはどれも一級品の性能のようだ。それを一方的に倒したことから、それなりの実力はありそうだね」
「それがどうしたって言うんだよドクトルダイバー! ああ、確かにこのゲムマ・ランザはスゲぇよ? ドクトルダイバーのミレス・マキナのように機体の形状を変化させられる上に、相手に触れた瞬間に機体内部を振動でオシャカにする機能っては厄介極まりねぇ。そしてゲムマがミレス・マキナと同じ遠隔操作型の兵器で、本体が別の銀河にある惑星だって話も気が遠くなりそうなスケールのデケぇ話だ。だけどな、そんなのは大した話じゃねぇだろ? 相手がどんなに強くてもその差を埋める兵器を作り出すのが俺達技術者だ。今はこのゲムマ・ランザに対抗できる兵器は無いかもしれないが、無いなら作ればいいだけだ。それなのにこの8789番のお嬢ちゃんは、俺達に自分に対抗できる兵器は作れないと言っているのが気に食わねぇ!」
頭部にシュノーケルを装着して顔を隠している老紳士の技術者、ドクトルダイバーが冷静な意見を言うと、それにガスマスクを装着して身体中に様々な銃器を装備しているガンマニア教授が早口言葉で噛みつき、そんなガンマニア教授を恐ろしい鬼の仮面をつけた筋骨隆々の老人の技術者、老師オーガが止める。
「落ち着かぬか、ガンマニア教授よ。ドクトルダイバーはこのゲムマ・ランザの力を冷静に評価しただけで、お主と同様に負けを認めたわけでは無い。無論、それは儂らも同じじゃ」
『『……』』
老師オーガの言葉にDr.スパイクヘッドとプロフェッサーRRも頷き、黒翼・ヘビー・マシーナリーが誇る五人の技術者の会話を聞いていたマリーが口を開く。
「どうやら話はまとまったようね? それじゃあ、これから私達はジョット君のアレス・ランザを初めとする機体の魔改造を行うわよ。周りがどう言おうか関係無い……これは私達兵器メーカーに所属する技術者の意地よ。どんなに凶悪で非人道的でも構わない……あのスク水白衣のロリッ娘、8789番に私達人類の兵器ではゲムマには勝てないという発言を撤回させるくらいの強力な兵器を作り出すわよ!」
『『……………』』
マリーの過激すぎ発言に、この場にいる五人の技術者達はそれを止めるどころか、むしろ静かな闘志を瞳に宿して頷くのであった。
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