第450話
「ジョット君?」
「動くなってどういうことだ? それに囲まれているって?」
「皆、周りをよく調べてみろ」
カーリーとベックマンに聞かれてジョットが周囲の様子を確認するように言うと、彼の言う通り周囲の空間をレーダーでスキャンしたジーナとシレイアがあることに気づく。
「これって……!? この周辺が糸のようなもので囲まれている?」
「そして糸の先にあるのは……ゲムマ・ランザみたいですね」
ジーナの言う通り、今ジョット達の周りには糸……肉眼では見えないマイクロサイズの細さのワイヤーが数十本漂っていて、シレイアが更にレーダーでワイヤーの先を調べてみると数十本に見えるワイヤーは実際は一本で、ゲムマ・ランザとそれが放った槍を繋げているのが分かった。
「そうか。あのワイヤーはゲムマ・ランザの身体の一部で、槍は完全に分離したわけじゃなくて形状変化の要領でゲムマ・ランザと繋がっていたのか。それならエネルギーを分ける必要もなくて槍の攻撃もスピードも下がらない。そして……」
「その通りであ〜る! このワイヤーも触れた瞬間に相手に振動エネルギーを送ることができるのであ〜る!」
ゲムマ・ランザと槍を繋ぐワイヤーを見て9543番がその正体を見抜くと、8789番が自慢するように彼女の言葉を引き継ぐ。
「何よそれ!? 触れたら一発でアウトの罠なんてズルすぎない?」
「戦う……遊ぶ相手はジョットだけだとか言っていたくせに、俺達全員を一網打尽にする手を打っていたってことか」
「これが強化されたゲムマの力と戦い方……厄介ですね」
「単なるロリッ娘じゃないってわけね」
8789番は最初、ゲムマ・ランザから放たれた槍を滅茶苦茶な軌道で飛ばしていたが、それは全てジョット達をワイヤーで包囲するためだったのだ。もしジョットの忠告を聞かずに動いていたら、ワイヤーから振動エネルギーの伝達を受けて機体を破壊されていたかもしれない。
ジーナとベックマン、シレイアとカーリーの四人は、何もできないまま自分達の機体を破壊される未来を想像したのか額に冷や汗を流して呟き、それを聞いた8789番は満更でもなさそうな笑みを浮かべる。
「ぬっふっふ。そんなに褒められたら照れてしまうのであ~る。しかしこのワイヤーの使い方はそれだけではないであ~るぞ?」
8789番がそう言うと、ジョット達の周りに漂うワイヤーがマイクロサイズから目で見える太さになり、更にワイヤーの途中で複数の膨らみが生じた。ワイヤーの途中で生じた複数の膨らみは、ワイヤーと繋がったまま大きくなっていくのと同時に形を変えていき、僅か数秒でゲムマ・ランザと同じ外見へとなった。
「……!? ちょっと待て。何だよこれは……!」
「ゲムマ・ランザが液体金属の塊なのは理解していますが、それは反則ではありませんか?」
「いやいや? 沢山いるように見えるが実際は一体だけでなので反則ではないのであ~る。そもそも人類は一体のゲムマ相手に十体以上のミレス・マキナを使うこともよくあるので、これでお相子なのであ~る」
突然ゲムマ・ランザが一体から複数になった光景にジョットが驚き、ムムが抗議の言葉を言うが8789番は何処吹く風といった感じで反論する。しかもその反論が正論と言えば正論なので、ジョット達はそれ以上何も言えなかった。
「さ、て、と、であ~る。それではそろそろ……」
(まいったな……。いよいよこれはマズい。こうなったら……)
今にも襲いかかってきそうな数体のゲムマ・ランザを見てジョットが自身の切り札を使おうかと考えたその時、8789番が口を開き次の言葉を言い放った。
「今日のところはこれで終わりにするのであ~る!」
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