第447話

「……マリー? 一応確認するけど、本当にドクトルダイバーの親戚や家族じゃないよな?」


 ムムの言葉を聞いて知り合いの技術者を思い出したジョットが魅火鎚のブリッジにいるマリーに聞くと、ブリッジのモニターで8789番の姿を見ていたマリーが首を横に振る。


「違うね。確かにドクトルダイバーには奥さんも娘さんもいるけど、どちらもドクトルダイバーに負けないくらいの水マニアで、いつでも海に飛び込めるようにダイビングスーツを着ているの。あんなどこかズレた海水浴客みたいな格好はしていないよ」


「それはそれでズレていると思うんだけどな?」


 ドクトルダイバーに妻子がいたのも初耳だが、その妻子が常にダイビングスーツを着用しているという事実にジョットが思わず一人呟いていると、8789番が周囲を見回して口を開く。


「……ふむん? どうやら予想以上にお客さんがいるようであ〜るな?」


 現在この宙域にはジョットのアレス・ランザの他にマーシャとセレディス、シレイアとベックマンの専用機であるミレス・マキナ、カーリーのアレス・アラーヴォスだけでなく、護衛としてついてきた大清光帝国の機士達が操る二十機近いミレス・マキナの姿もあった。そして大清光帝国の機士はいつでも攻撃できるように武器を構えて8789番を取り囲んでいるのだが、8789番は特に慌てた様子もなく興味深そうに自分を取り囲むミレス・マキナを見ていた。


「人類の兵器……確かミレス・マキナと言ったであ〜るか? それがこんなにたくさん……。普段のワガハイや仲間達であればオモチャがたくさんあると喜ぶところなのであ〜るが、生憎と今日のワガハイが用のあるのは我が宿命のライバル、祭夏・ジョットだけなのであ〜る。……なので」


『『……………!』』


 8789番がそこまで言うと彼女の下にあるゲムマが動き始め、それを確認した大清光帝国の機士達が即座に8789番ごとゲムマを攻撃を仕掛けようとする。しかし……。


「祭夏・ジョット以外はご退場頂こうか!」


『『……………!?』』


 大清光帝国の機士達の攻撃が当たる直前、ゲムマの巨体が爆散したかと思うとその中から蒼く輝く液体が周囲に広がる。ジョットとマリーとセレディス、シレイアとベックマンとカーリーの六人は8789番から距離を取っていたため蒼く輝く液体を避けることができたが、大清光帝国の機士達は避けることができずに蒼く輝く液体に機体を飲み込まれて行動不能となった。


「何だあれは?」


「液体金属だ。8789番の本体である惑星は液体金属の資源が豊富で、それを使ったみたいだな」


 8789番のゲムマの中から周囲に広がった蒼く輝く液体。それを見てジョットが疑問を口にするとアレス・ランザの肩に立つ9543番がその正体を教える。


「液体金属を使った攻撃って、ドクトルダイバーのミレス・マキナと同じじゃない? ……もしかして本当にドクトルダイバーの親戚だったりする?」


「液体金属の資源が豊富な惑星が本体ですか……。あのスクール水着はその伏線だったのですね」


「ぬっふっふ……! 驚くのまだまだ早いであ〜るぞ? 驚くのはこれを見てからにしてもらおうか!」


 9543番の話を聞いてマリーとムムがそう言うと、8789番は自慢するような笑みを浮かべて、それと同時に蒼く輝く液体が動きをみせた。周囲に広がっていた蒼く輝く液体が一ヶ所に集まったかと思うと姿を変えていき、その姿を見たジョットが思わず声を上げる。


「あれは……!?」


 蒼く輝く液体が一ヶ所に集まった後に変形した姿は、ジョットが操るアレス・ランザに非常によく似ていた。

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