第443話
9543番がジョット達の所に来てから数日後。彼女は今も火颶槌にいてジョットの観察をしていた。
シレイアから9543番の存在、ゲムマの正体を知らされた大清光帝国の皇帝や上層部は、より詳細なゲムマの情報を調べるために、そしてシレイアを初めとする惑星エイロンにいる人々の安全のために9543番の身柄を要求したのだが彼女はこれを拒否。9543番にとって今の人間の女性の姿をした身体はゲムマと同じ使い捨ての身体で、そのため徹底的に調べられて最後には解剖されても構わないのだが、今は最も関心があるジョットとアレス・ランザの観察を続けたいので彼の側から離れたくないという理由からだった。
9543番がジョットから離れないと知ると皇帝はシレイアにジョットから離れるように言うのだが、それに対してシレイアは「危険だからと言って夫の側から離れるわけにはいかない」と答え、皇帝に血の涙を流させた。その後、皇帝はジョット達の元に9543番を遠巻きに監視しながら、もし彼女が暴れ出したら即座に対応する機士を含めた特殊部隊を複数送り込んだ。
人間の精神波や運命さえも認識できる9543番は自分を監視している特殊部隊の存在に当然気づいているのだが、彼女はそれを気にもせずにこの数日間ジョットの側で過ごしてきた。
その間の9543番はたまにジョットに質問責めをするがそれ以外は大人しいもので、最初はゲムマの正体だということで警戒していたジョット達も次第に彼女に慣れていったのだが、ある日9543番の口から衝撃的な事実を告げられることとなる。
「………えっ?」
その日、ジョット達は火颶槌の部屋でそれぞれくつろいでいたのだが、突然ジョットの観察をしていた9543番が上を見上げて若干驚いた表情となる。
「どうした、9543番?」
「……うん。ちょっとマズイことになったかも?」
ジョットが9543番に話しかけると、部屋にいる全員の視線が彼女に集まる。
「マズイって何が起こったんだ?」
「実は今仲間達から情報が来たんだけど、ワタシがジョット君の観察をしているのを知って、ワタシの仲間が自分もジョット君の観察をしたいってコッチに分身体を送ったみたいなの。人類がゲムマって呼んでいる戦闘タイプのヤツをね」
『『………………………!?』』
「それってかなりマズイじゃないか……!」
9543番は自分の仲間が惑星エイロンにゲムマを送り込んだと言い、それを聞いたジョット達に緊張が走るのだが、彼女の話にはまだ続きがあった。
「しかもその分身体を送ったワタシの仲間っていうのがね、ちょっと変わった奴なの」
「変わった奴? ……もしかしてミレス・マキナとの戦いを止めて人類狩りをしようと言い出した奴か?」
ジョットが以前9543番から聞いた、ミレス・マキナとの戦いに飽きてきた彼女の仲間の話を思い出して聞くと、9543番は首を横に振る。
「ううん。違うよ。その仲間はワタシと同じくらいミレス・マキナとの戦いを楽しんでいて、人類狩りの話も一番反対していた。だからミレス・マキナで戦って遊んであげれば、人類そのものに危害は与えないよ」
「それって安心できるのかな?」
9543番にとっては単なる遊びでも人類にとってはゲムマの襲撃は災害そのものであり、彼女の言葉にジーナが表情を引きつらせる。
「でも『アイツ』は遊び……ミレス・マキナとの戦いが好きすぎるせいか、いつも変な暴走をしそうになって、その度にワタシ達が止めていたんだよね。今回はそんなアイツが単独で行動しているらしくて……」
「野放しにするなよ、そんな奴。もっと厳重に監視しておけよ」
困ったような表情する9543番の言葉に、言い知れない不安を感じたジョットは思わずそう言った。
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