第440話
「……ええっと、ちょっと待って? 少し状況を整理させて?」
あまりにも話が大きくなりすぎて頭痛がしてきたカーリーが右手で痛む頭を抑えて、残った左手を9543番に向ける。
「まず最初に9543番はゲムマの本体……っていうか遠くから操っていた存在で、その正体はこことは別の銀河にある意思を持った惑星」
「そうだね」
「次に9543番達がゲムマを使って私達人類に攻撃をしてきたのは、別に人類を絶滅させるためじゃなくて、単にミレス・マキナと戦い合わせて遊ぶため」
「その通り」
「でも最近になって9543番の仲間の中にミレス・マキナとの戦いに飽きたのが出てきて、その仲間達は次に人類そのものを攻撃することを新しい遊びとしようとした」
「そうなんだ」
「だけどジョット君が予想外な戦い方をしたことから『ミレス・マキナとの戦いはまだまだ楽しめるかも?』という意見が出始めて、しばらくは今まで通りミレス・マキナとゲムマを戦わせる遊びを続けて人類を攻撃する予定はない、と?」
「そうそう」
「………」
こうして話をまとめると改めて信じられないくらい規模が大きい話であり、何でもないように答える9543番に対してカーリーは頭痛が更に酷くなった気がしたが、それでも9543番に質問を続けた。
「……それでミレス・マキナとの戦いを続けたかった9543番はジョット君にお礼を言いにきたわけね?」
「そういうことだね。だから祭夏・ジョット君。本当にありがとう。君がいてくれたお陰でワタシ達は今まで通りミレス・マキナと遊ぶことができるよ」
「え? あっ、ハイ。……それはどうも?」
カーリーの質問に答えてから9543番はジョットに頭を下げて礼を言うのだが、ジョットはそれにどう答えたらいいか分からなかった。
何しろ単なるまぐれ勝ちが銀河の平和に繋がるだなんて予想もしていなかったことだし、9543番の言う遊びは人類からすれば本物の戦いであるため、それがこれからも続くと言われたら素直に喜べるはずもない。そのためジョットは戸惑った声で返事をしたのだが、9543番はそんな彼を見て首を傾げた。
「どうしたんだ、ジョット君? 何か不満でもあるのかな?」
「いや、そんなことは……」
何か勘違いしている9543番にジョットは慌てて訂正しようとするのだが、彼女は聞いておらず小声で何かを呟きながら考えごとをする。
「やっぱり言葉だけのお礼だけでは足りなかったかな? でもお礼の品物を渡そうにも人類が求めている物質なんて分からないし、それが
考えがまとまったのか9543番は顔を上げると真っ直ぐにジョットの目を見た。そして……。
『『……………!?』』
「とりあえず、ワタシと生殖活動の真似事でもしてみる?」
9543番は全身鎧のような宇宙服を脱ぎ捨てると、その下からは芸術品のような女性の裸体が現れる。今までの話から今の9543番の身体が、ゲムマと同じ彼女の本体が作った作り物であるのは分かっているのだが、ジョット達にはどこから見ても本物の人間のようにしか見えなかった。
「せ、生殖活動の真似事って……どう言うことだ!?」
ジョットが9543番の裸体、特に豊かな乳房から辛うじて視線を逸らして聞くと彼女は何でもないように答える。
「なに、ここに来るまでにワタシも人類について色々と調べてみたのだが、どうやら人類は生殖活動をする時に強い幸福感を覚えるそうじゃないか? それでワタシは今、ジョット君にお礼として渡せる物質を持っていないから、その代わりに生殖活動の真似事をして君に幸福感を与えようと思ったんだ。生憎君の子孫を産むことはできないけど、身体は君の周りにいる女性達を参考に君好みの造形にしたはずだから幸福感を与えるのには十分なはずだ。それでどうする? ワタシと生殖活動の真似事をするか?」
『『するわけない!』』
両手で自身の豊かな乳房を揉みながら9543番がジョットに話しかけると、ジョットより先にマーシャとセレディスとカーリーが口を揃えて彼の代わりに答えるのであった。
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