第439話

「精神波を遮断する術って……俺が以前倒したミレス・マキナの操縦を妨害するゲムマのことだよな? ……新種じゃなかったのか」


 自分が貴族に出世してアレス・ランザを得るきっかけとなったゲムマのことを思い出したジョットが呟くと、9543番はそれに頷く。


「そう。そのことでワタシは貴方にお礼を言いに来たんだよ。貴方のお陰でワタシ達は今の遊びを続けられるからね」


「今の遊びを続けられる? そう言えばミレス・マキナとの戦いに飽き始めた奴が出てきたと言っていたな?」


「でもそれって良いことなんじゃないの?」


 9543番の言葉を聞いてセレディスが先程彼女が言っていたことを思い出し、マーシャが首を傾げる。9543番の言う遊びとは人類とゲムマの戦いのことであり、それに飽きた者が出ればゲムマとの戦いも終わるのではとマーシャは思ったのだが、その後の9543番の話を聞いてジョット達は自分達の考えが甘いことを思い知ることとなる。


「そうかな? 今の遊びに飽きた仲間が次にやろうとしていた新しい遊びは君達人類にとっても面白くないと思うけど?」


「新しい遊び? それって一体何なの?」


「人類狩り」


『『……………!?』』


 カーリーに聞かれて9543番が、自分の仲間達が考えている新しい遊びの内容を口にすると、それを聞いてジョット達が言葉を失った。


「君達人類だけでなく生物って、危険に直面すると信じられない行動をするだろう? だから君達人類を直接攻撃したらあの人形……ミレス・マキナと言ったっけ? あれよりも面白い玩具を作ってくれるんじゃないかって仲間は考えているらしいけど……そっちの遊びの方がよかった?」


『『よくない!』』


 9543番の質問にジョットとマーシャ、セレディスとカーリーの四人が揃って大声を出して答えると、9543番は頷く。


「やっぱりそうだよね。ワタシもそんな遊びは趣味が悪いし、下手したら人類が絶滅しちゃうから反対していたんだけど、予想以上に今の遊びに飽き始めていた仲間が多かったんだよね。そしてそんな時に現れたのが祭夏・ジョット君、君なんだよ」


「俺? そこでどうして俺が出てくるんだ?」


「実は今から少し前、ワタシの仲間の一部が新しい遊び……人類狩りをしようとしたんだ。その仲間は沢山の人類が集まっている場所を狙って、そこの人類を全滅させようとしたけど……そこで予想外の出来事が起こった」


「……ちょっと待て? それってまさか……?」


 今の話を聞いて何かに気づいたジョットの前で9543番は話を続ける。


「仲間達は禁じ手の精神波を遮断する術を使ってその場所を守っていた人形……ミレス・マキナを無力化したけど一体だけ例外がいた。そのミレス・マキナはワタシ達が精神波を遮断できる距離の外から攻撃してきてワタシの仲間の分身体を破壊したんだ」


「やっぱりあの時か……」


「私達がジョット君に助けられたあの事件……」


 ジョットの予想通り、9543番の言う人間狩りという新しい遊びをやろうとした彼女の仲間とは、彼が出世するきっかけとなった大清光帝国とリューホウ王国の共同式典を襲ったゲムマのことだったらしく、ジョットとマーシャは当時のことを思い出して呟いた。


「そしてあの祭夏・ジョット君の戦いにワタシ達は大いに興味を持った。退屈になりかけてきた今の遊び、ミレス・マキナとの戦いもやり方次第ではもっと楽しくなるのではって思う仲間が沢山出てきて、今では人間狩りをしようなんて思う仲間はいなくなったよ」


「いや、あれは単なる偶然、まぐれ勝ちなんだけど……というか、もしあの時に俺があそこにいなかったりゲムマに勝てていなかったら、ゲムマは今頃人類を直接狙っていたのか?」


「そうかもしれないね」


『『……………!?』』


 ジョットの質問に9543番はあっさりと頷き答え、彼の偶然の勝利が銀河中の大勢の人間の生命を救ったという事実にジョット達は驚き言葉を失った。






〜後書き〜

 この小説のタイトルの「銀河戦場遊戯」とは、

「パイロットが死なない兵器の登場で人類が戦いをゲーム感覚でするようになった」、

「ゲムマにとって人類との戦いは単なる遊びだった」、

 という二つの意味があります。


 それとジョットは間違いなく人類全体でトップクラスの幸運の持ち主で、もし◯パロボに参加したら幸運関係の精神スキルと特殊技能を全て持っていると思います。

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