第438話

「ゲムマの正体……というか操っているのが別の銀河の意思を持つ惑星?」


「そんなことがあり得るのか?」


「確かに惑星は宇宙に存在する最大級の生命体である、という学説がありますが……」


「……多分だけど彼女は嘘は言っていないと思うよ。自分の正体もゲムマを操っているってことも、私達に知られてもどうもならないと理解しているから話した……ううん、単に興味がなくて聞かれたから答えただけ……?」


 ようやく9543番の言葉を頭が理解し始めたマーシャとセレディスとムムがそう言うと、カーリーが9543番の言葉に嘘はないと言う。ただ、超能力レベルで相手の心理を読み取るカーリーでもゲムマと会話をするのは初めてなため、その声は若干自信が無さそうであった。


「まあ、確かに。本体の居場所が分かっても別の銀河にあったら手の出し様もないからな。……でも意思を持つ惑星ってそんなにたくさんあるものなのか? もしかして俺達がいるこの銀河にもあったりする?」


 カーリーの言葉に返事をしてからジョットが疑問を口にすると9543番は僅かに首を傾げてから答える。


「そうだね。普通はワタシ達みたいな明確な自我に目覚めた惑星が現れる確率は極めて低くて、一つの銀河で一万個以上の惑星に自我が目覚めるだなんて天文学的な確率なんじゃないかな? あと、この銀河にはワタシ達のように自我が目覚めた惑星は確認されていないね。まあ、ワタシ達は君達人類との『遊び』以外にこの銀河に興味がないから調べていないだけで、探したら見つかるかもね?」


「ちょっと待ってください」


 9543番がジョットの疑問に答えると、そこでムムは彼女の言葉の中に気になる単語が混じっているのを聞き逃さなかった。


「今、遊びと言いましたか? 人類とゲムマが遊ぶとはどういうことですか?」


「どういうことってそのままの意味だけど? だって君達人類はワタシ達が分身体をこの銀河に送ったらすぐに、ワタシ達の分身体と同じ精神波で操る人形を用意してくれてボク達と遊んでくれただろう? それからはワタシ達にとって最大の楽しみは君達人類との遊びになったんだ。……何しろ宇宙は娯楽というものがほとんど無いからね」


「精神波で操る人形? ……それってまさか」


「ミレス・マキナとアレス・マキナのことか?」


 9543番の言う精神波で操る人形がミレス・マキナ、そしてアレス・マキナであることにマーシャとセレディスが気づくと、9543番はマーシャとセレディスに頷いてみせる。


「そう。君達はあの人形をそう呼んでいたね。そして君達はワタシ達からは信じられない早さであの人形をより高性能なものにしていって、そのことも非常に興味深かった。ワタシ自身も自分で作った分身体と君達の人形と遊ばせるのが一番の楽しみだったんだけど、最近この遊びに飽きてきた仲間が出てきたんだ」


「飽きてきた?」


 恐らく9543番が言っている遊びとはミレス・マキナとゲムマとの戦いのことで、そのことに違和感を感じながらジョットが聞くと彼女は一つ頷いてから答える。


「そうだ。その仲間はいくら人類が人形を進化させようと、ワタシ達にはその人形を操る精神波を遮断する術があるから勝とうと思えばいつでも勝てる。そんな人形と戦っても詰まらないと言い出したんだ。……全く、精神波を遮断する術は遊びが詰まらなくなるから禁じ手にすると約束したのに、約束すら守れないとは」


『『……………』』


 嘆かわしいと首を横に振る9543番だが、ジョット達は今までミレス・マキナとアレス・マキナがゲムマと戦えていたのは彼女達が自分達の遊びのルールを守っていたお陰で、相手がその気になれば自分達には勝ち目がなかったという事実に何も言えずにいた。

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