第437話
『『……………』』
ジョット達は最初、目の前にいる女性、9543番の言っていることが理解できなかった。
9543番はよりにもよって自分のことをゲムマだと言い、その言葉の意味を理解して最初に行動したセレディスが首を横に振った。
「……ハッ。まさかゲムマときたか。私はてっきりアレス・マキナの機士であるジョットの力を狙った工作員だと思っていたが、実際はただの気がふれた狂人だったようだな。……と、言いたいところだが」
セレディスは9543番の自分がゲムマであるという発言を鼻で笑おうとしたが、すぐに真剣な表情となって9543番を見る。
「しかしムムとカーリーが口を揃えて貴様が人間ではないと言う以上、貴様は本当にゲムマなのかもしれないし、少なくとも人間ではないのだろう。……それで自分がゲムマであると言うのなら、その証拠を見せれるか?」
「証拠、か……。こんなのじゃ駄目かな?」
9543番はセレディスの言葉に右腕を上げると、右腕の表面から鉱物が浮かび上がってきて一瞬で数倍の大きさに膨れ上がる。それはゲムマが攻撃を仕掛ける時に行う行動で、それを見たジョット達の間に緊張が走った。
「どうかな?」
「……そうだな。確かに君は本当にゲムマなのかもしれない。でもそのゲムマがどうしてここにいるんだ? そもそもその姿が君達ゲムマの本当の姿なのか?」
右腕を元の大きさと形に戻す9543番にジョットが質問する。
何故今まで戦闘行為しか仕掛けてこなかったゲムマがこうして接触してきたのかは分からないし、それ以前にゲムマについて詳しい情報が何もないためジョットが聞くと、9543番は首を横に振った。
「いいや、違うよ。この身体は君……ジョットって呼ばれているんだよね? 君と話をするためにワタシから採れた素材から作り出した身体なんだ。君が話し易いように、今も君の周りにいる人間達の身体の造形を参考にしたんだよ」
「ムム達の顔を参考にした? それでか……」
ジョットは9543番を最初に見た時にどこかで会ったような気がしたのだが彼女の言葉を聞いて納得し、カーリーが緊張した表情をしたまま9543番に話しかける。
「この身体、ね……。やっぱりゲムマは別の所から分身を操っていたのね。それで貴女の本体は今どこにいるの?」
ゲムマの正体については大清光帝国だけでなく他の国々も様々な考察を行っており、その中には「人類がミレス・マキナを操っているように、ゲムマも遠方から戦闘用の身体を操っている」という考えがあった。それが9543番の発言で事実であると確信したカーリーは、答えてくれるとは思っていなかったが彼女の本体が何処にいるのかと聞くと、9543番は予想を反してあっさりと答えた。
「ワタシの本体はこの銀河とは別の銀河にあるよ。その銀河にはワタシを含めた『意思を持った惑星』が一万四百四十九個あって、ワタシはその中で九千五百四十三番目に自我を獲得したから9543番と呼ばれているんだ」
『『……………』』
9543番の言葉を聞いてジョット達は、再び彼女の言葉が理解できずに思考が停止してしまう。
今9543番は何と言った?
本体がこの銀河とは別の銀河にある?
自分の意思を持った惑星が一万四百四十九個もある?
まさかゲムマの正体が、別の銀河に一万個以上ある自我を持った惑星が作り出して送り込んできた遠隔操縦型の兵器だとは思っていなかったジョット達は、9543番の言葉を理解するのに多少の時間を必要とするのであった。
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