第436話
「動かないでください。それ以上動いたら力ずくで拘束させてもらいます」
ジョットの姿を見て全身鎧のような宇宙服を着た人物が一歩進み出るとムムが警告する。
「貴方は何者ですか? 何の目的でこの火颶槌に侵入したのですか?」
「ワタシか? ワタシは……」
「ジョット! ムム!」
ムムの質問に宇宙服を着た人物が答えようとした時、セレディスの声が聞こえてきた。ジョットが声が聞こえてきた方を見ると、通路の向こう側から戦闘服を着て手に武器を持ったセレディスとマーシャとカーリーがこちらへ向かって来ていた。
「セレディス! マーシャとカーリーも! 一体どうして?」
「私が呼んでおきました。三人は戦闘訓練も受けていますからね。他の皆さんは別の場所に避難してもらっています」
ジョットが疑問の声を上げるとムムが答える。彼女の言う通りマーシャとセレディスは実家の私設軍で、カーリーは大清光帝国で生身での戦闘訓練を受けており、ミレス・マキナもアレス・マキナも使えない今の状況ではとても頼りになる存在であった。
しかし宇宙服を着た人物はマーシャ達が現れても動じることはなく、むしろ興味深そうに彼女達を見る。
「やっぱり彼の周りにいるのは全員そうなんだね……。準備をした甲斐があったよ」
「一体何を準備……って、え……?」
宇宙服を着た人物の言葉にジョットが聞こうとするが、その前に宇宙服を着た人物はヘルメットを取って見せた。
ヘルメットを取った宇宙服を着た人物の素顔は、艶のある黒髪と褐色の肌をした女性だったが、ジョットは彼女の顔をどこかで見たような気がした。
「ほう……? 中々立派なものを持っているじゃないか?」
セレディスは宇宙服を着た人物の素顔を見てから続けて彼女の胸元を見て、挑発するような目を向ける。宇宙服を着た人物はヘルメットを取った時に胸元も大きく開いており、そこからはセレディスに負けないくらい豊かな乳房が覗き見えていた。
「準備って色仕掛けの準備ってこと?」
「確かにそれでしたら旦那様に効果は抜群ですね」
「お前達な……」
マーシャとムムはそう言うと、ジョットを宇宙服を着た人物から隠すように彼の前に立ち、ジョットはあまりの信用の無さに落ち込みたくなった。するとカーリーがまるで得体の知れないものを見るような目を向けながら宇宙服を着た人物に話しかける。
「貴女……一体何なの?」
「? カーリー?」
今まで見たことないくらい緊張した様子のカーリーにジョットだけでなく他の女性達も彼女を見るが、カーリーはそれに気づかず宇宙服を着た人物に視線を向けたままだった。
「貴女は人間のようで人間じゃない……。見た限りだと私達と同じ人間だけど、どこか違和感がある……」
「私もカーリー様と同意見です。部屋のドアを開ける前から、そして今も貴女の生体反応を観測していますが、そのデータは人間の生体反応と比べて異なっています。……そう言えばまだ最初の質問に答えてもらっていませんでしたね。貴女は何者なのですか?」
ムムがカーリーの言葉を肯定してから宇宙服を着た人物に聞くと、ジョット達はまだ彼女の名前も聞いていなかったことに気づく。
「ああ、そうだったね。ワタシの名前は『9543番』。仲間達からはそう呼ばれている」
宇宙服を着た人物、9543番はそう言うと、続けてジョット達に向けて衝撃的な事実を口にした。
「ちなみにワタシはそこの二人が言うように人間ではない。ワタシは君達人類が『ゲムマ』と呼ぶ存在だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます