二十章
第435話
大清光帝国の正規軍が管理している軍用コロニーの一つ。その内部にある高層ビルの頂上で、全身鎧のような宇宙服を着た一人の人物が下を見下ろしていた。
宇宙服を着た人物の視線の先では、ジョットとその仲間達の前に一人の男が立ち塞がって何やら叫んでいたが、後から現れた複数の男達によって取り押さえられて何処かへ連れて行かれる光景があった。それを見て宇宙服を着た人物が一人呟く。
「……やっぱり他に人がいる所だと邪魔が入るか。彼と話すには彼一人、もしくは彼と仲間達だけしかいない場所に行くしかないか」
宇宙服を着た人物がいる高層ビルはジョット達がいる場所から三キロ離れた場所にあるのだが、宇宙服を着た人物はジョットの姿をその目ではっきりと捉えながら、どうやれば彼の元へ行って話ができるかを考える。
「何か……彼や他の人間の目を逸らすきっかけさえあれば何とかなるんだけど……。何かないかな?」
そう言うと宇宙服を着た人物は今度は視線を上に向けてジョットに近づくチャンスが来ないかと願うのだが、宇宙服を着た人物の願いは意外にもすぐ叶うのであった。
「はぁ……。これで何回目だ?」
「三回目です、旦那様」
ジョット達が任務を終えて真道学園がある惑星エイロンに帰ってきてから数日後。ジョットは宇宙空間にいた。
ジョットは先程まで惑星エイロンの周辺宙域に現れたゲムマの群れと生徒会の会員達と共に戦っていて、最後のゲムマを倒し終えてから彼が呟くと同じアレス・ランザの戦闘機に乗っているムムがそれに答える。
ジョット達が惑星エイロンから帰ってきて今日までの数日間で、三回もゲムマも群れが惑星エイロンの周辺宙域に現れた。この宇宙でゲムマが出現することは珍しいことではないのだが、こんな短期間で同じ場所に何度もゲムマの群れが現れるのは異常なことであった。しかも……。
「それに……今回のゲムマ達も旦那様を集中的に狙っていましたね?」
ムムの言う通り、今回も含めた三度のゲムマの襲撃、ジョットが操るアレス・ランザが出撃をするとゲムマ達はそれまで戦っていた他の生徒会のミレス・マキナを無視して、一斉にアレス・ランザを狙ってきたのだ。
「そうなんだよな……。 本当に俺、どこかでゲムマの恨みを買ったのかな?」
数日前の軍用コロニーの時だけでなく、この数日間のゲムマの襲撃でも執拗に狙われたジョットは自分に何か原因があるのではと考えるのだが、結局答えは出なかった。
そしてゲムマとの戦闘が終わってから数時間後。火颶槌に戻ったジョットが自室のドアを開けようとすると、後ろについて来たムムが何かに気づいて彼を止める。
「………!? 旦那様。お待ちください」
「ムム?」
突然声を上げたムムにジョットがどうしたのかと声をかけるが、彼女は自分の主人に答えずジョットの部屋のドアを注意深く見つめていた。
「旦那様の部屋に今、何者かがいます。……でもこの反応は一体? いえ、それよりもどうやってここまで……?」
相変わらずの無表情だが言葉からムムが部屋の中にいる何者かを警戒しているのが分かったジョットがドアから離れると、彼女が彼に変わってドアを開ける。アンドロイドであるムムは常人より遥かに高い身体能力を有しており、短時間であれば戦闘用サイボーグやパワードスーツを着た兵士相手でも互角に戦うことができて、部屋にいる人物が危険な存在であればその場で拘束するつもりでいた。
「……」
「ああ、やっと帰ってきたんだ。待っていたよ」
ムムが無言でドアを開けると部屋の中にいた侵入者、全身鎧の鎧のような宇宙服を着た人物がムムの後ろにいるジョットに話しかけるのだった。
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