第432話
「エラン!? お前、どうしてここに? というか、その機体はどうしたんだ? ミレス・アクセルカイザーは確か……」
スラスターの暴走で跡形もなく爆散したはず、とジョットが言おうとした時、通信機からエランの笑い声が聞こえてきた。
「ハハハッ! これはトライアルで採用された時、見学に来た軍や貴族の方々に販売しようと持ってきた機体さ! まだボクの宇宙船に十体以上あるぞ!」
「もう販売するつもりだったのか……」
「取らぬ狸の皮算用という言葉を知らないのでしょうか?」
エランの言葉にジョットとムムが思わず呟く。ジョットとムムも相変わらずの無表情だが、内心では揃って呆れ果てた表情を浮かべていた。
「そしてボクがここにやって来たかと言うと、君を助けるためさ」
「俺を?」
「そうさ! トライアルではちょっとしたトラブルがあったけど、ミレス・マキナは本来ゲムマと戦うための兵器! つまり七体のゲムマに防戦一方の君をボクが助ければ、それはボクの方が君より上と言うことになる! これでシレイア様はボクのものさ!」
どうやらまだシレイアを諦めていないエランの無茶苦茶な理論に、ジョットもムムは信じられないという気持ちになる。
「……何で俺の周りには『懲りる』とか『諦める』とか『学習する』と言った言葉を知らない奴が多いんだろうな」
「お言葉ですが、旦那様もある意味でそうですよ?」
「………」
ジョットが真道学園でよく自分に襲いかかってくる男子生徒達を思い出して呟くと、それにムムがジョットもある意味で学習していない人間だと言う。確かに今までジョットは何度もトラブルに巻き込まれていたが、その中には彼自身が気をつけていれば回避できたかもしれないものもあり、思い当たる点があるジョットはムムの言葉に何も言い返せなかった。
そしてそんな会話をしている間にも七体のゲムマは、相変わらずミレス・コルヴォカッチャトーレのみに攻撃を仕掛けてきており、ゲムマの攻撃を避けながらジョットはエランに声をかける。
「……チッ! おい、エラン! 助けに来てくれたんだったら、速くコイツらを何とかしてくれないか!?」
「フフン! いいだろう。精々ボクに感謝したまえ!」
エランがそう言うとミレス・アクセルカイザーは背中のスラスターから強力な光を放って、カーリーのアレス・ランザだけでなく防衛部隊と親衛隊のミレス・マキナを抜き去り、ジョットの後を追う七体のゲムマに接近する。
「受けてみろ! これがミレス・アクセルカイザーの一撃だ!」
ミレス・アクセルカイザーは両腕に内蔵されているビーム兵器からビームの刃を作り出し、七体のゲムマの一体を背中から斬りつけようとする。だが……。
「この! この! この! な、何で当たらない! 逃げるな、この卑怯者が!」
エランの攻撃は単調で、攻撃を仕掛けられたゲムマはエランの方を見ることなく彼の攻撃を全て避けていく。これにはジョットとムムだけでなく、この場にいる全員が呆れるしかなかった。
「やっぱりエランに期待するだけ無駄だったか……」
「こ、この……! ボクを無視するなぁ!」
ジョットはエランのことは当てにしないことにすると更にミレス・コルヴォカッチャトーレの速度を上げ、七体のゲムマはジョットの後を追う。そしてジョットとゲムマから無視されたエランは怒りを覚えると、自分もミレス・アクセルカイザーの速度を上げてジョットとゲムマの間に割って入ろうとするのだが……。
「………あ、アレ?」
エランがジョットとゲムマの間に割って入った瞬間、ミレス・アクセルカイザーのスラスターが暴走して機体が大爆発を起こした。この爆発の衝撃でミレス・コルヴォカッチャトーレと七体のゲムマの動きが僅かに止まってしまったのだが、この時ジョットは内心で笑みを浮かべた。
「最後の最後でナイスアシストだったぞ、エラン」
「ジョット君! 準備できたよ!」
ジョットが呟くのと同時に通信機からマリーの声が聞こえてきた。
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