第431話
「ジョット君!」
「分かった!」
こちらに向かって突撃してくるゲムマを見てカーリーが声をかけると、それだけで彼女の考えを理解したジョットが即座に返事をして二人は行動に移った。
「まずは……これ!」
カーリーがアレス・ランザの右肩のビームキャノンをゲムマに向けて放つ。
高速で行動するミレス・マキナやゲムマは、射撃武装の標的にされてもビームや砲弾が放たれる前に回避行動が可能で、ミレス・マキナやゲムマとの戦闘では射撃武装は牽制程度の効果ぐらいしかない。それはカーリーが今放ったアレス・ランザのビームキャノンも例外ではなく、ゲムマはカーリーのビームを難無く避けるのだが、その隙を突いて戦闘機形態のミレス・コルヴォカッチャトーレがゲムマに接近していた。
「今だ!」
戦闘機形態のミレス・コルヴォカッチャトーレの両腕は機体の底部にあり、それを鳥の脚のような形で展開することで両腕に備わっているノコギリ型の武装を使用できる。ゲムマに接近したジョットはすれ違いざまにゲムマの胴体を両腕のノコギリ型の武装で斬りつけた。
ミレス・コルヴォカッチャトーレの攻撃でゲムマは胴体に大きな損傷を負ったのだが、ゲムマは当然ながら痛がる様子などなくミレス・コルヴォカッチャトーレの後を追おうとする。しかも……。
「……え? 何アレ?」
ミレス・コルヴォカッチャトーレの後を追おうとしているのはジョットが攻撃したゲムマだけでなく、コロニーの防衛部隊や皇帝の親衛隊と戦っていた他の六体のゲムマまでもがミレス・コルヴォカッチャトーレに向かおうとして、それを見たカーリーが驚いた声を上げる。防衛部隊と親衛隊の隊員達も突然のゲムマ達の行動に驚いていたが、一番驚いているのは七体のゲムマ全てに追われることになったジョットであった。
「ど、どういうことだこれは!? 何でゲムマ達が一斉に俺を狙ってくるんだ!?」
「何かゲムマから恨みを買っているのでは? 旦那様はこれまでにも多くのゲムマを退治していますし」
「そんな無茶な!? それだったらカーリーやここにいる機士達だってゲムマを何体も倒しているぞ?」
ジョットの叫びに同じ戦闘機のコクピットに乗っているムムがゲムマから狙われている理由を予測するのだが、納得のいかないジョットは背後から襲ってくるゲムマの攻撃を避けながら反論する。
それからも七体のゲムマは執拗にジョットを攻撃して、カーリーと防衛部隊と親衛隊が攻撃してもゲムマはカーリー達に反撃しようとせずにミレス・コルヴォカッチャトーレを追おうとする。
「本当に何なのコレ? 私達なんか眼中にないってこと? ……ねぇ、ジョット君? 君、本当に何かゲムマに恨みを買うようなことをしたんじゃない?」
「だから知らないって……危なっ!?」
カーリーの言葉に返事をしながらジョットはゲムマの攻撃を紙一重で避ける。
現在ジョットは回避行動の精度を高めるためミレス・コルヴォカッチャトーレの機体が受けた衝撃を感じる感度を最大値に設定しており、一撃でもゲムマの攻撃をまともに受ければ激痛が彼を襲うだろう。そのためジョットはいつも以上に精神を集中させてゲムマ七体の攻撃を避けており、これからどうするかを考えていると、コロニーの方から一気のミレス・マキナが高速で飛んできた。
「ハハハッ! どうやら困っているようだな、祭夏・ジョット!」
コロニーから飛んできたのは、トライアルの最中に空中で爆散したはずのエランが操るミレス・アクセルカイザーであった。
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